ドイツはGK大国と呼ばれていることをご存じでしょうか。
ドイツでは、以前より充実したGK育成システムが存在しています。DFC(ドイツサッカー協会)やブンデスリーガ主導で、ゴールキーパーの育成が体系的に行われており、GKというポジションが、花形ポジションになっているといいます。
その結果、ドイツでは各時代で世界最高レベルのゴールキーパーを輩出してきました。以下のような選手が代表的です。
- ゼップ・マイヤー(1970年代):バイエルン・ミュンヘンの黄金期を支え、1974年のW杯優勝に貢献。
- ハラルト・シューマッハ(1980年代):EURO1980優勝、W杯準優勝2回(1982年、1986年)。
- ボド・イルクナー(1990年代):1990年W杯で正GKとして優勝。
- オリバー・カーン(1990~2000年代):2002年W杯でMVPを獲得。
- イェンス・レーマン(2000年代):2006年W杯でPK戦で活躍。
- マヌエル・ノイアー(2010年代~):2014年W杯優勝の立役者で、スイーパー・キーパーの概念を確立。
- マルク=アンドレ・テア・シュテーゲン(現代):バルセロナで活躍し、ノイアーの後継者と目される。
本記事では、このうち、2000年代以降における、サッカードイツ歴代の正GKを振り返り、主要大会で活躍したゴールキーパーたちを詳しく解説します!!楽しんでいただけたらと思います。
ドイツの主要大会における歴代ゴールキーパー
ドイツの主要大会における正GKの振り返ります。
Embed from Getty Images大会 | ゴールキーパー | 成績 |
---|---|---|
EURO2000 | オリバー・カーン | グループリーグ敗退 |
FIFA W杯2002 | オリバー・カーン | 準優勝 |
EURO2004 | オリバー・カーン | グループリーグ敗退 |
FIFA W杯2006 | イェンス・レーマン | 3位 |
EURO2008 | イェンス・レーマン | 準優勝 |
FIFA W杯2010 | マヌエル・ノイアー | 3位 |
EURO2012 | マヌエル・ノイアー | ベスト4 |
FIFA W杯2014 | マヌエル・ノイアー | 優勝 |
EURO2016 | マヌエル・ノイアー | ベスト4 |
FIFA W杯2018 | マヌエル・ノイアー | グループリーグ敗退 |
EURO2020 | マヌエル・ノイアー | ベスト16 |
FIFA W杯2022 | マヌエル・ノイアー | グループリーグ敗退 |
EURO2024 | マヌエル・ノイアー | ベスト8 |
2010年代、2020年代はマヌエル・ノイヤーの時代だったことが見て取れますね。
ドイツ代表の歴代ゴールキーパー
ここからは、2000年代以降にドイツ代表で活躍した歴代のゴールキーパーを紹介してきます。
マヌエル・ノイアー(2009年~2024年)
Embed from Getty Images- 名前:マヌエル・ノイアー(Manuel Neuer)
- 国籍:ドイツ
- 所属チーム:バイエルン・ミュンヘン(シャルケ04 II→シャルケ04→)
- 誕生日:1986年3月27日
- 身長/体重:193cm/93kg
- 代表歴:ドイツ代表(2009年~2024年)
マヌエル・ノイアーの代表でのキャリア
2009年にドイツ代表デビュー。2010年W杯ではレネ・アードラーの負傷もあり、正GKの座を獲得し、大会を通じて安定したプレーを披露しました。ここからノイアーの伝説が始まった感じですよね。
2014年W杯ではドイツを優勝に導く決定的な役割を果たし、大会最優秀ゴールキーパーに選出!決勝戦のアルゼンチン戦ではゴンサロ・イグアインの決定機を阻止するなど、歴史に残るパフォーマンスを披露しました。
2018年W杯では怪我から復帰するも、ドイツ代表はグループステージ敗退。2022年W杯では正GKとしてプレーしましたが、ドイツは再びグループステージで敗退しました。
2024年の代表引退
2024年8月21日、ノイアーは長年守り続けたドイツ代表からの引退を発表しました。
彼の引退により、ドイツ代表は新たな時代へと突入することになりました。
マヌエル・ノイアーのプレースタイルと特徴
スイーパー・キーパーの先駆者
ノイアーはゴール前にとどまらず、ペナルティエリアの外まで積極的に飛び出してボールを処理する「スイーパー・キーパー」としての役割を確立しました。これにより、ドイツ代表やバイエルン・ミュンヘンの最終ラインは高く設定され、攻撃的な戦術が可能になりました。
反射神経とシュートストップ能力
圧倒的な反応速度とポジショニングにより、至近距離からのシュートにも強く、数々のスーパーセーブを見せています。
足元の技術とビルドアップ能力
ノイアーはフィールドプレーヤー並みの足元の技術を持ち、最終ラインからのビルドアップに貢献。精度の高いロングパスで攻撃の起点となることも多いです。
ノイアーの伝説的なセーブ
ノイアーのセーブ集的な動画はYouTube等で探せばいくらでも出てくるのですが、その中から個人的に好きなセーブをピックアップ!
2014年W杯 準々決勝 vs フランス
なんでもない正面のシュートのように見えるのですが、この位置へのシュートって実はゴールキーパーがとても取りづらいシュートなんですよね。それを難なく右手一本でセーブ!個人的にはこのセーブをみてノイアーに注目し始めました。
※FIFA公式の動画でブログへの埋め込みでは閲覧できないので、「YouTubeで見る」をクリックしてみてください。(1:08~)
2014年W杯 ラウンド16 vs アルジェリア
スイーパー・キーパーとして何度も最終ラインをカバー。とんでもなく広大なスペースをカバーするノイアーのプレーに驚いた人も多かったのではないでしょうか。
2016年UEFA CL vs アーセナル
https://www.youtube.com/watch?v=b6s4Yw84TxU
ドイツ代表は関係ないですが、これも有名なセーブですよね。至近距離からのシュートを神セーブ!
2020年UEFACL 決勝 vs PSG
ネイマールの決定機を含むシュートの嵐をシャットアウト!1-0のクリーンシートでバイエルンを見事に優勝に導きました!ドイツ代表関係ないですね。
ノイアーと内田篤人との東日本大震災時のエピソード
現在サッカー解説者として活躍する内田篤人とノイアーはかつてシャルケというチームでチームメイトでした。
2011年に東日本大震災が発生したとき「こんなときに自分はサッカーをやっていていいのか?」「なにか自分にできることはないか?」と悩んだ末、自身のメッセージをアンダーシャツに書いて、試合終了後にテレビを通して発信することにしました。
しかし、試合に負けてしまっては、それどころではなくなってしまいます。そんなことを考えていると、当時のキャプテンだったノイアーが内田に声をかけました。
ノイアー:「日本へのメッセージか。今日それを見せるのか?」
内田:「勝ったら見せようと思ってる。負けたら見せない」
ノイアー「じゃあ、勝つから。オレがゴールを守るから。今日は勝てるから」
その言葉通り、見事に試合に勝利したシャルケ。
「日本の皆へ 少しでも多くの命が救われますように 共に生きよう!」
そのメッセージをテレビを通じて発信することができました。大好きなエピソードの一つです。
マヌエル・ノイアーは、単なるゴールキーパーではなく、現代サッカーにおける戦術的変革をもたらした革命児ともいえます。スイーパー・キーパーとしての役割を確立し、ドイツ代表やバイエルン・ミュンヘンの成功に貢献し続けてきました。
2024年に代表を引退したものの、彼の影響は後世のゴールキーパーに受け継がれることでしょう。
オリバー・カーン(1994年~2008年)
驚異的な反射神経と強靭なメンタルを武器に、ドイツ代表とバイエルン・ミュンヘンの守護神として活躍しました。
Embed from Getty Images- 名前:オリバー・カーン(Oliver Kahn)
- 国籍:ドイツ
- 所属チーム:引退(カールスルーエ→バイエルン・ミュンヘン→)
- 誕生日:1969年6月15日
- 身長/体重:188cm/91kg
- 代表歴:ドイツ代表(1995年~2006年)
オリバー・カーンの代表でのキャリア
1998年W杯ではアンドレアス・ケプケの控えとして参加しましたが、1999年以降はドイツ代表の正守護神となりました。
2002年のW杯では、カーンの活躍がドイツを決勝へ導きました。準決勝までの試合では圧倒的なセービングを見せ、彼の鉄壁の守備がなければ決勝進出は不可能だったと言われています。決勝のブラジル戦ではロナウドのシュートを防ぎきれず敗れましたが、ゴールキーパーとして史上初めてW杯MVP(ゴールデンボール賞)を受賞しました。
2002年は日本と韓国で共同開催のワールドカップだったこともあり、日本中がワールドカップに熱狂していた時代でもありました。そのときに、大活躍したカーンは、日本人の中でもかなり話題になったのを記憶している方も多いのではないでしょうか。
2006年W杯では、イェンス・レーマンが正GKを務め、カーンは控えに回りました。しかし、3位決定戦ではキャプテンとして先発し、見事なパフォーマンスでドイツの勝利に貢献しました。そして、この試合がカーンの代表引退試合となりました。
オリバー・カーンのプレースタイルと特徴
鋼のメンタルと強烈なリーダーシップ
カーンは、試合中に味方を鼓舞し、チームを引っ張るカリスマ的な存在でした。ときには強烈すぎて、味方も迷惑そう。。
驚異的なシュートストップ能力
カーンは並外れた反射神経を持ち、至近距離からのシュートをことごとく防ぎました。特に2002年W杯では、その能力が最大限に発揮されました。
フィジカルの強さと対人戦の強さ
188cmの身長と強靭なフィジカルを活かし、空中戦や1対1の場面で圧倒的な強さを誇りました。迷いのない明確なプレーが印象的でした。
オリバー・カーンの伝説的なセーブ
2002年W杯 vs 韓国(準決勝):韓国の猛攻をシャットアウトし、決勝に導いたセーブ!
2002年W杯 vs ブラジル(決勝):敗戦したものの、ブラジルの猛攻を圧巻のパフォーマンスでストップ。最後は自らのミスもあり失点。大会MVPを受賞したものの、試合後にゴールポストにもたれかかりながら、打ちひしがれている姿がなんともいえず印象的でした。
2001年 UEFA CL決勝 vs バレンシア:PK戦で決定的なセーブを連発し、バイエルンを優勝に導く。すわけではないのですg、わけではないのですが、まるで止めたのが当たり前のように感じるくらい、自らにシュートを誘い込んでいるような印象を受けます。あ、ドイツ代表関係なかったですね。
オリバー・カーンの引退後のキャリア
カーンは2008年に現役を引退し、その後はサッカー解説者や経営者として活躍しました。
Embed from Getty Images2020年~2023年にはバイエルン・ミュンヘンのCEOに就任し、クラブ運営にも関わっていました。
イェンス・レーマン(1998年~2008年)
イェンス・レーマンもドイツ代表で長年にわたり活躍したゴールキーパーです。冷静な判断力と驚異的な反射神経を持ち、特に2006年W杯でのPK戦での伝説的なセーブは今も語り継がれています。
Embed from Getty Images- 名前:イェンス・レーマン(Jens Lehmann)
- 国籍:ドイツ
- 所属チーム:引退(シャルケ04→ACミラン→アーセナル→シュツットガルト→アーセナル)
- 誕生日:1969年11月10日
- 身長/体重:190cm/87kg
- 代表歴:ドイツ代表(1998年~2008年)
イェンス・レーマンの代表でのキャリア
レーマンは1998年にドイツ代表に初招集されましたが、長年オリバー・カーンの控えに甘んじていました。しかし、2006年W杯を前に正GKの座を勝ち取りました。
2006年W杯準々決勝のアルゼンチン戦で2本のPKをセーブし、ドイツを準決勝へ導きました!余談ですが、PK戦ではレーマンはアルゼンチン選手のシュートをする時の癖が書いてあったメモを使用し、相手キッカーの癖を把握していたことが、かなり話題になりました。
この動画、メモの話よりも長年ライバル関係にあり、決して仲がよくなく見えたカーンと抱擁するシーンが胸熱ですね。
2008年EUROでは正GKとしてドイツを決勝へ導きましたが、スペインに敗れ準優勝。この大会を最後に代表から引退しました。
イェンス・レーマンの伝説的なセーブ
2006年W杯 vs アルゼンチン(準々決勝):PK戦で2本のセーブを決め、ドイツを準決勝へ導くシュートストップ!
https://youtu.be/FNxjBGxIwmY?si=31rtIf2MQXPqVJfb
2006年プレミアリーグ vs マンチェスターユナイテッド:スールシャールの振り向きざまのシュートを右手指先でセーブ!
レーマンの引退後のキャリア
レーマンは2008年に代表を引退し、その後2011年にアーセナルで現役を引退。引退後はアーセナルやアウクスブルクでコーチングスタッフとして活動してました。
マルク=アンドレ・テア・シュテーゲン(2012年~)
マルク=アンドレ・テア・シュテーゲンはドイツ代表とバルセロナの守護神として活躍。現代サッカーにおいて最も技術的に優れたゴールキーパーの一人です。しかしながら、同じ時代にマヌエル・ノイアーがいたことで、ドイツ代表としてのキャリアはその実力からすると、正直物足りない。たぶん本人もそう思っているはず。
驚異的な反射神経、足元の技術、ビルドアップ能力と、現在のゴールキーパーに求められる能力を全て高いレベルで備えている、世界最高のGKの一人です!
Embed from Getty Images- 名前:マルク=アンドレ・テア・シュテーゲン(Marc-André ter Stegen)
- 国籍:ドイツ
- 所属チーム:バルセロナ(ボルシア・メンヒェングラートバッハ→)
- 誕生日:1992年4月30日
- 身長/体重:187cm/85kg
- 代表歴:ドイツ代表(2012年~現在)
テア・シュテーゲンの代表でのキャリア
2012年にドイツ代表デビューを果たすも、長年マヌエル・ノイアーの控えに甘んじることが多い時代が続きます。しかし、2020年代に入るとノイアーのパフォーマンス低下や怪我などもあった一方で、テア・シュテーゲンは安定した活躍を続け、正GK争いに加わるようになった。
主要大会での活躍
- 2017年コンフェデレーションズカップでは正GKとして優勝に貢献。
- 2022年W杯では出場が期待されるも怪我から復帰直後のノイアーの控えとして参加。
2024年にノイアーが代表引退を表明し、とうとうテア・シュテーゲンの時代がきたかと誰もが期待するところでした。しかし、2024年9月ラ・リーガの試合中に膝に重症を負い、全治1年と言われています。かける言葉を見つけるのも難しい。
テア・シュテーゲンのプレースタイルと特徴
圧倒的な足元の技術とビルドアップ能力
フィールドプレーヤー並みのボールコントロールと正確なパス能力を誇り、後方からの組み立てに大きく貢献。
すさまじい反射神経とシュートストップ
至近距離からのシュートにも冷静に対応し、圧倒的な反応速度でスーパーセーブを見せることが多い。
冷静な判断力と統率力
守備陣を的確に指示し、試合全体をコントロールする能力に長けている。
テア・シュテーゲンの伝説的なセーブ
2015年 UEFA CL vs バイエルン・ミュンヘン(準決勝):テア・シュテーゲンのセーブでまず思い出すのがこれ!レヴァンドフスキの決定機をとんでもない反応でスーパーセーブ!!
2017年コンフェデ vs チリ(決勝):数々のスーパーセーブで優勝に貢献!
特に圧巻だったのはこのセーブ!お手本のようなゴロセーブですよね。
2019年 vs ドルトムント(CL):PKストップを含む圧巻のパフォーマンス!!
2020年 vs レアル・マドリード(エル・クラシコ):2020年のレアル相手のこのセーブも是非みて欲しいです!
ア・シュテーゲンは、現代サッカーにおいて最も優れたゴールキーパーの一人であり、一日も早く怪我から回復して、ノイアー後のドイツの守護神として活躍する姿を見たいところです。
まとめ
楽しんでいただけましたでしょうか。本記事では2000年以降のドイツ代表のGKの魅力を紹介してきました。
- マヌエル・ノイアー
- オリバー・カーン
- イェンス・レーマン
- マルク=アンドレ・テア・シュテーゲン
また、この記事では紹介しきれませんでしたが、現在はホッフェンハイムのオリバー・バウマン、シュツットガルトのニューベルに続いて、マンチェスターシティのシュテファン・オルテガが、ドイツ代表の正GK争いを繰り広げている状況です。
来年2026年にはアメリカ、カナダ、メキシコW杯が開催されます。ノイアーが代表を引退した今、その大舞台に立つのは誰になるのでしょうか。