プレミアリーグのチェルシーの歴代最強のキーパーは誰なのか。チェルシーに所属した歴代GKの実績やエピソード、必見のスーパープレーなどを紹介した上で、最もクラブに価値をもたらしたGKが誰なのか考察します。
チェルシーとはどんなチーム?
チェルシーはイングランドのトップリーグであるプレミアリーグで、ロンドンに本拠地をおくクラブです。愛称はBlues(ブルーズ)。
2003年にロシアの大富豪ロマン・アブラモヴィッチがオーナーに就任してからというもの、その資金力を活かし、プレミアリーグ5回、UEFAチャピオン図リーグ2回の優勝を誇る強豪チームの1つとなりました。
チーム転機の1つとなったのが、2004年のジョゼ・モウリーニョ監督が就任です。就任1年目で勝ち点95、得失点差57という驚異的な数字で、50年ぶりにイングランドのトップリーグでの優勝をもらたします。
以降、プレミアリーグの「ビッグ6」の一角として数えられ、欧州最高峰の大会であるUEFAチャンピオンズリーグの常連チームになっています。
良いチームには必ず良いゴールキーパーがいます。このチェルシーの活躍も偉大なゴールキーパーの存在なくしては語れません。ここからは、歴代のゴールキーパーを紹介していきます。
ペトル・チェフ(2004-2015)
- 名前:ペトル・チェフ(Petr Čech)
- 国籍:チェコ
- 誕生日:1982年5月20日
- 身長/体重:196cm/90kg
- 所属チーム:引退(FKフメル・ブルシャニ→スパルタ・プラハ→スタッド・レンヌ→チェルシーFC→アーセナルFC→チェルシーFC)
- 代表歴:チェコ代表(2002年-2016年)
ペトル・チェフ。この人の存在なしに、チェルシーの歴史は語れません。
チェフは前述のモウリーニョ監督と同じ時期にチームに加入しました。それまで不動の守護神として君臨していたカルロ・クディチーニを抑え、モウリーニョはチェフを正GKとして指名。
チェルシーはこのチェフのデビューシーズンで、驚異的な成績でプレミアリーグを制します。38試合でわずかに15失点。これは今だに破られていないプレミアリーグの記録です。また、当時のプレミアリーグ新記録である1025分間無失点も記録。チェフ自身も、デビューシーズンで、プレミアリーグに35試合に出場してわずか13失点。シーズンのクリーンシート数もプレミア史上最多となる21試合を記録しました。
その後チェフは約10年間もの間、正GKの座を守り続けています。これはチェルシーほどのビッグクラブではすごいことです。
チェフがチェルシーにもたらしたタイトル
- UEFAチャンピオンズリーグ:1回 (2011-12)
- UEFAヨーロッパリーグ:1回 (2012-13)
- プレミアリーグ:4回 (2004-05, 2005-06, 2009-10, 2014-15)
- FAカップ:4回 (2006-07, 2008-09, 2009-10, 2011-12)
- フットボールリーグカップ:3回 (2004-05, 2006-07, 2014-15)
- FAコミュニティ・シールド:2回 (2005, 2009)
チェフが保持するプレミアリーグでの記録
- 最多クリーンシート数:202 ※アーセナルでの記録も含む
- 1クラブでの最多クリーンシート数:162
- 1シーズン最多クリーンシート数:21
チェフが獲得した個人タイトル
- チェルシー年間最優秀選手 2011
- チェルシー・アウトスタンディング・アーブメント・アワード 2007
- プレミアリーグ・ゴールデングローブ賞 2005(21クリーンシート)、2010(17クリーンシート)、2014(16クリーンシート、アーセナルのヴォイシュ・シュチェスニーと同率)
- UEFA最優秀GK 2005、2007、2008
- チェコ・ゴールデンボール・トロフィー 2005、2006、2007、2008、2010、2011、2012、2013
- チェコ年間最優秀選手 2005、2008、2009、2010、2011、2012、2013
- 国際スポーツ記者連盟ベストGK賞 2007
ヘッドギアがトレードマーク。その原因となった事件
チェフといえば、プレー中に装着しているヘッドギアがトレードマークでした。チェフがこのヘッドギアを装着することになったきっかけをご存じでしょうか。
それは2006年10月14日のプレミアリーグ第8節・レディング戦。開始早々に相手MFスティーヴン・ハントと激しく衝突して、頭蓋骨陥没骨折。一時意識不明の重体となり、選手生命どころか命に係わる状態でした。
故意には見えませんが、衝突するのは見えていたであろう非常に危険なプレーです。全治1年とも言われましたが、なんと2007年1月のリバプール戦、わずか3か月で復帰。驚異的な回復力です。
この大けがからの復帰以降、チェフはラグビー用のヘッドギアを装着し引退までプレーしました。骨折事態は完治しているものの、強度はが完全に戻っていないというのが理由です。
チェフのチェルシーでのスーパープレー
印象に残っているプレーといえば、2011-12のチャンピオンズリーグでしょうか。準決勝ではリーガ・エスパニョーラのバルセロナと対戦します。
1stレグでは試合終了間際に大仕事をやってのけます。プジョルが目の前でコースをヘディングで変えた、非常に難しいシュートをストップしました(動画の1:15~)。2ndレグでは、チェルシーに1人退場者が出たことにより、チェルシーはバルセロナの猛攻撃をひたすら体を張って守る展開に。チェフも多くのセーブでゴールを守り、見事に決勝進出を決める姿には心を打たれました。
そしてブンデスリーガ、バイエルンと対戦した決勝では、試合中にロッベンのPKをストップ。1-1のまま試合終了で迎えたPK戦でもPKストップしチームを欧州制覇に導いています。
チームにもたらしたタイトルの数々、そして記憶に残るビッグセーブの数々。
現時点では、この人がチェルシー史上最もクラブに価値をもたらしたGKといっても過言ではないでしょう。
ティボ・クルトゥワ(2014-2018)
- 名前:ティボ・クルトゥワ(Thibaut Courtois)
- 国籍:ベルギー
- 誕生日:1992年5月11日
- 身長/体重:200cm/96kg
- 所属チーム:レアルマドリード(ヘンク→チェルシー→アトレティコ・マドリード→レアル・マドリード→)
- 代表歴:ベルギー代表
2014年からチェルシーの正GKを背負ったのがティボ・クルトゥワです。チェルシーには2011年に加入しましたが、その直後にアトレティコ・マドリードにレンタル移籍。レンタル期間を終えてチェルシーに復帰したのが2014年です。
2014-15シーズンの1年間はティボ・クルトゥワとペトル・チェフという世界最高のGKが2人、同時にチームに在籍していました。ときはモウリーニョ監督の2回目の政権の2年目。モウリーニョはこの状況を以下のようにコメントしていました。
「誰がプレーするかを言うことはできない。なぜなら、選手たちが知らないのだからね。世界中にいる素晴らしいGKたちに敬意を表している。私が言えることは、チェルシーには世界最高のGK3人のうちの2人がいるということだ。それは特別なことだ。」
https://www.soccer-king.jp/news/world/eng/20140816/221935.html
その中で、モウリーニョ監督が正GKに選んだGKはクルトゥワでした。2014-15シーズンはチェルシーはプレミアリーグとEFLカップの2冠を達成。ただし、EFLカップでは決勝の舞台は、モウリーニョの計らいによりチェフに譲ることになりました。
クルトゥワがチェルシーにもたらしたタイトル
- プレミアリーグ:2014-15, 2016-17
- フットボールリーグカップ:2014-15
- FAカップ:2017-18
山あり谷ありのクルトゥワのチェルシーでのシーズン
2冠の1シーズン目から一転。チェルシーでの2シーズン目はクルトゥワにとって、キャリア史上最悪のシーズンといえたかも知れません。プレミアリーグでは10位と20年ぶりに2桁順位。自身もシーズン2度退場処分となりました。これはGKとしてプレミアリーグ史上6人目となる不名誉な記録です。
一方、3シーズン目はアントニオ・コンテ監督のもと、プレミアリーグを制覇。個人としてもプレミアリーグ ゴールデングローブ賞を獲得しています。
クルトゥワといえば、ロシアW杯で日本と対戦
クルトゥワといえば、チェルシー在籍時代のロシアワールドカップにて、日本代表がベルギー代表と対戦したときの相手GKとして記憶されている方も多いのではないでしょうか。
そうです。決勝トーナメント初戦の対戦相手がベルギーでしたね。同点で迎えた後半ロスタイム、クルトゥワの素早いスローイングを起点としたカウンターでシャドリが決勝点を決められたあの試合ですね。
日本に逆転勝利を収めた後も、ベルギーの正GKとして大会を勝ち抜き、ベルギー史上初のワールドカップ3位に貢献。ブラジル代表戦で、ネイマールのシュートを止めたのは衝撃的でした。また、個人としてもワールドカップのゴールデングローブ賞を獲得しています。
クルトゥワはチェルシーファンからは良く思われていない。なぜか?
チェルシーのファンにとって、クルトゥワはあまり印象が良くありません。終わりよければすべてよし、と言われますが、その終わりが良くなかったからです。
2018-19シーズンに向けたチーム練習の初日。クルトゥワは練習を欠席しました。これは本人がレアル・マドリードへの移籍を希望していたが、交渉が思うように進んでいない状況を打破するための強行手段だったとも伝えられています。
レアルへの移籍の理由も、子供がいるマドリードでの暮らしを希望したからと発言していますが、お相手の女性とは籍を入れることなく破局していたりする経緯もある、あまり印象が良くない形で報道されていました。
結局チェルシーも、後任GKのケパの獲得の目途が立ったため、クルトゥワのレアル・マドリードへの移籍は実現しますが、なんとも後味の悪い形での退団となりました。
さらには、レアル・マドリードでのデビュー戦後に「レアル・マドリードのレベルはチェルシーよりも高い」と発言し、更にチェルシーファンから批判を受けることになりました。
これについては、後にクルトゥワが以下のように弁明しています。
「メディアは、チェルシーのレベルがレアル・マドリードよりも低いと僕が発言したように言っている。でも、僕はそんなこと思ってもいないよ。ただ、レアル・マドリードの練習はよりスピーディーだったと言った。それはレアル・マドリードの質について言っただけで、チェルシーの質に言及したわけではない」
https://www.soccer-king.jp/news/world/eng/20180908/827610.html
ケパ・アリサバラガ(2018-)
- 名前:ケパ・アリサバラガ(Kepa Arrizabalaga)
- 国籍:スペイン
- 誕生日:1994年10月3日
- 身長/体重:186cm/88kg
- 所属チーム:チェルシーFC(バスコニア→ビルバオ・アスレティック→ポンフェラディーナ→アスレティック・ビルバオ→レアル・バリャドリード→)
- 代表歴:スペイン代表(2017年~)
「100億の男」はなぜ批判されているのか
ケパ・アリサバラガはチェルシーに2018年に7年契約で加入。移籍金はGKとして史上最高額の7100万ポンド(約102億3000万円:当時)。
それだけ大きな期待をもってチェルシーに迎え入れられたケパですが、思うような活躍ができず、2020-21シーズン途中、チームはエドゥワール・メンディを正GKとして活躍し、その後はサブに甘んじる形になっています。
ケパはいつからその評価を大きく下げることになったのでしょうか。
ケパのデビューシーズンである、2018-19シーズンは開幕スタメンで出場すると、プレミアリーグで36試合に出場。チームも3位と決して悪くない成績でした。
交代拒否事件
世界的に悪い意味で目立ってしまったのが、同シーズンのEFLカップにおける「交代拒否」事件。
この事件が起きたのはEFLカップ決勝のマンチェスター・シティ戦。試合終了間際にケパが足をつったのを見て、サッリ監督は、サブのウィリー・カバジェロと交代させようとしましたが、ケパがこれを拒否。
結局、交代しないまま試合終了。試合はPK戦にもつれこみます。PK戦でケパもPKストップを見せるものの、試合は結局敗れることに。
交代拒否ということで、監督の顔に泥をぬった形になり、大きな批判を受けました。
後にケパはこの件に関してコメントをしています。試合も延長に差し掛かり、少しでも時間を稼ごうとする行為だったこと。そのことを監督に伝えようとしたが、歓声にかき消され伝えられなかったこと。一方、交代をしなかったことに関しては監督やウィリーカバジェロ、および関係者に謝罪をしています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d5ebf3a6a33a7a998e2423a263e097ac9b436c64
現在は、サッリ監督のとの関係も良好とのことだが、当時、この交代拒否をきっかけに、控えに回ることに。また、この頃から周囲のケパに対する批判が大きくなっていったように感じます。
2本に1本はシュートを決められるGK
翌2019-20シーズン、チーム自体は4位フィニッシュと、CL出場権を獲得しているし、決して悪い成績ではありませんでした。しかし、その失点の多さは目立ちました。プレミアリーグ38試合中、33試合に出場し、47失点。これはチェルシーでは、元ロシア代表GKドミトリー・ハーリンが1993-94シーズンに喫した「48」に準ずる数字でした。
またケパのセーブ率54.5%というのもプレミアリーグ最低の数字。「100億の男」としての期待に十分に応えているとはいい難い成績でした。
ケパがチェルシーにもたらしたタイトル
- UEFAヨーロッパリーグ:2018-19
- UEFAチャンピオンズリーグ:2020-21
- UEFAスーパーカップ:2021
ケパのプレーの特徴
ケパのプレの特徴について解説します。
ミドルパスが上手
ケパはミドルパスがとても上手で、当時のサッリ監督の戦術には欠かせない存在でした。
また、試合とは別物ではありますが、キックの技術という意味ではチェルシー公式インスタグラムで紹介された、8本連続でバー当て成功!の動画が記憶に新しいですね。
PKストップ率が高い
ケパはPKストップには定評があります。チェルシー加入以来、PK戦も含めると実に8回のPKストップを記録。10年間所属していたペトル・チェフが6回なので、3年間で8回のストップがいかに高い数字かがわかると思います。
2021-22のUEFAスーパーカップのビジャレアル戦では、メンディがスタメンで出場しましたが、1-1で迎えた延長後半にPK戦を見据えてケパに交代。PK戦では見事に2本のPKをストップし、今季初タイトル獲得に貢献しています。
トゥヘル監督曰く、この采配は思い付きではなく、カップ戦では想定していた采配で、あらかじめGK陣とも話し合っていたとのこと。
「PK阻止率が最も高いのはケパだ。分析チームとGKコーチがデータを見せてくれた。ノックアウトステージでこれをする可能性があると選手に伝えた。(先発した)エドゥアール(・メンディ<Edouard Mendy>)がそれを受け入れた姿勢はファンタスティックだ」
試合後のトゥヘル監督のコメント
ケパがストップした全てのPKはチェルシー公式の記事で見られます!
10の質問:ケパ・アリサバラガ | 公式サイト | チェルシーフットボールクラブ (chelseafc.com)
中でも、EL決勝でケパが見せた仁王立ちPKストップはいいですよね。左右に山を張ることが多いPKでは正面に飛んでくるシュートを止めることは意外と難しいのです。
シュートストップの実力は?
ケパはシュートストップが下手なGKというわけではもちろんありません。しかし、2019-20シーズンは、シュートを触っているのに、はじききれずゴールになるシーン、あるいは、足もとへのシュートを手で止めようとした下をすり抜けてしまう、いわゆる「遮断機」が目立ちました。
シュート時に肘を後ろに引きすぎているため、反応が遅れているのではないか?など技術的な原因もあるのかも知れませんが、私はメンタルの要素も大きいと思っています。
やはり、ファンや監督からの信頼を得られない状態で真のパフォーマンスを発揮することは難しい。監督やファンと、きちんと信頼関係を築きなおすことで、高いパフォーマンスを発揮できるようになると思っています。
エドゥアール・メンディ(2020-)
- 名前:エドゥアール・メンディ(Édouard Mendy)
- 国籍:セネガル、フランス、ギニアビサウ
- 誕生日:1992年3月1日
- 身長/体重:198cm/87kg
- 所属チーム:チェルシー(ASシェルブール→オリンピック・マルセイユB→スタッド・ランス→スタッド・レンヌ→)
- 代表歴:セネガル代表(2018年~)
メンディは2020年9月にチェルシーに加入すると、すぐにランパード監督の信頼を獲得しました。
10月のマンチェスター・ユナイテッド戦でのパフォーマンスは印象的でした。ライバルチームを完封したことで、ファンや監督の信頼をゆるぎないものにした気がします。
デビューシーズンは、31試合に出場し16のクリーンシートで、チームの3位フィニッシュに貢献します。チェフのデビューシーズンを彷彿とさせる大活躍です。
更には、加入1シーズン目にして誰もが欲しがるチャンピオンズリーグのタイトルも獲得します。このヨーロッパ最高峰の大会では、12試合に出場し、9つのクリーンシート。これは大会歴代最多記録です。
メンディがチェルシーにもたらしたタイトル
- UEFAチャンピオンズリーグ: 2020-21
- UEFAスーパーカップ:2020-21
チェルシー加入前は失業状態?
チェルシー加入後、すぐに輝かしい栄光を手に入れているメンディですが、ほんの5年前には所属チームがない時期もありました。2014年にシェルプールとの契約が解除され、翌2015年にマルセイユに加入するまでの1年間、所属チームがない状態でした。
23歳で所属クラブなし。失業状態の中、サッカーをやめかけていた時期もあったそうです。
今シーズンのメンディも驚異的な活躍を続けており、今や世界最高のGKの1人としての呼び声が高くなってきています。
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チェルシーの歴代最強のキーパーは?
現時点では、チェルシー史上、最強のGKはチェフで間違いないでしょう。チェルシー程のビッグクラブで10年間正GKとして君臨してきた実績。そしてその10年間の間にチェルシーにもたらしたタイトルの数も圧倒的です。
しかしながら、この2年のメンディの活躍には目を見張るものがあります。早速ヨーロッパ最高のタイトルも獲得していますし、今後の活躍次第では、メンディこそがチェルシー最強の守護神と呼ばれる日がくるかも知れません。
これからのメンディの活躍に注目していきたいと思います。