コラム スーパーセーブ

川口能活の2000年アジアカップ決勝についてとことん語りたい

日本代表史上、最高のGKの一人である川口能活のスーパーセーブ動画。もう20年以上前の試合になりますが、アジアカップ2000、決勝のサウジアラビア戦。川口の引退会見でも、自身のベストゲームの一つと語られたこの試合の川口のプレーについて、画像を使いとことん解説します。

[川口神セーブ連発!!!] 日本 vs サウジアラビア アジアカップ2000レバノン ハイライト

いや、ホントこういう動画あげてくださる方、感謝です。

川口にとってどんな試合だったか?

川口能活にとって、このアジアカップというのはどういう意味がある大会だったか。なんとしても、当時の日本代表フィリップ・トルシエ監督の評価を取り戻したい大会でした。

96年にアトランタ 五輪 、98年フランスワールドカップで日本の絶対的守護神として活躍した川口能活の状況は、フランスワールドカップ後にトルシエ監督が就任してから一変しました。トルシエ監督が、川口の永遠のライバル、楢崎正剛選手を重宝したからです。

就任初戦のエジプト戦こそ川口がスタメンでしたが、その後急激に出番をなくしていきます。トルシエも楢崎他3名の選手を中心にチームを作っていくと明言し、兼務していた2000年のシドニー五輪にも楢崎をオーバーエイジで招集。トルシエの信頼を勝ち取れない状況に、川口は焦り、たまに出る試合でもどこか空回っているような状況でした。

しかしそんな川口にチャンスが。楢崎がシドニー五輪で骨折したためアジアカップ・レバノン2000でアピールするチャンスが巡ってきたのです。

決勝まで道のり

そのアジアカップで日本は圧倒的な強さで決勝まで勝ち上がります。ここまで圧倒的な強さでアジアカップを勝ち上がったのはあとにも先にもこの大会くらいじゃないかな。

  • 2000年10月14日 予選リーグ 日本 4-1 サウジアラビア
  • 2000年10月17日 予選リーグ 日本 8-1 ウズベキスタン
  • 2000年10月20日 予選リーグ 日本 1-1 カタール 
  • 2000年10月24日 準々決勝 日本 4-1 イラク
  • 2000年10月26日 準決勝 日本 3-2 中国 

ただ、そんな中で川口としては毎試合失点を重ね、トルシエの信頼を取り戻すには不十分ともいえる歯がゆい試合が続きます。そして迎えた決勝の相手は予選リーグで圧勝したサウジアラビア。しかしサウジアラビアは大会途中で監督を解任し、決勝では全く別のチームになっていました。

川口能活の伝説の試合の1つといえるこのサウジアラビア戦はそんな状況で迎えたものだったので、その興奮は今でも忘れられません。

川口能活のスーパーセーブの数々!

前半早々から波状攻撃をしかけるサウジアラビアに川口も勇気のある飛び出しでサウジのチャンスをつぶしまくります。しかし前半9分、日本はサウジにPKを与えてしまいます

このPKは完全に逆をとられますが、シュートは右のはるか外へ。川口のオーラに圧倒された結果でしょう。このPKで流れが変わった日本は前半29分に望月のゴールで先制します。この望月と川口は高校の先輩後輩でもありますし、後に
SC相模原の代表となった望月が、川口を呼び寄せたという関係もあります。そのSC相模原が結局は川口にとっての最後のチームになるんですよね。

1-0のリードで前半を終えた日本ですが本当の地獄はこれから。後半はサウジアラビアに圧倒的に押し込まれます。しかしこの日の川口はとにかく大きく見えた。いや、見せていた。攻め込まれながらも最後のシュートは枠を外れることも多かったのですが、どんなに外れたシュートにもとにかく食らいつきます。

これなんて完全にシュートは枠を外れているのにあと少しで手が届きそう。ましてや枠内にシュートがこようもんなら余裕で止められますよと言わんばかりの動き。サウジの選手の中では生半可なシュートは入らないとますますシュートが力んでいきます。

そしてここからが神セーブ3連発。

1本目頭越しのスピードのあるシュートに素早いクロスステップで対応(6:46)

1発目は後半13分。相手がクロスを上げてくるかシュートを打ってくるかわからない状況では、シュートを打たれても対応できるが、できるだけGKが前にポジションをとることで、クロスボールに対して大きくプレッシャーをかけることができます。

このセーブのシーンでもかなり前目にポジションを取り相手のクロスにプレッシャーをかけます。

相手が川口の頭越しにシュートを打ってくると、体を反転して戻りながらのクロスステップでボールに追いつきボールを書き出します。

このプレーは見かけよりも難しいんですよね。

2本目:至近距離からのヘディングシュートをまさかのキャッチング(7:08)

次はヘディングシュートへの対応。後半17分に低いアーリークロスを、ゴールエリアのちょっと外で反らされるようなヘディングシュート。ヘディングシュートは、キックと違い足の振りから飛んでくる位置が予測できないので、キックへの反応に比べて難しい。しかも、このシュートはスピードがあるクロスボールに対するヘディングなのでなおさらです。

そのシュートに反応しただけでなく、両手でがっつり掴むとは。。仮に触っていただけだったあr、この画像の右端で詰めている選手に完全に決められているシーンでした。素晴らしい。

3本目:手前でワンバウンドする難しいシュートを掻き出すようなセービング(9:45)

後半41分。いよいよ終盤です。サウジの選手が放ったミドルシュートはゴール前でバウンドする処理が難しいボール。しかも決して良くないグランドコンディションなので、少し大きくボールがはねています。

しかし最後までボールを見て手を当てるだけでなくボールを掻き出すようにゴールの枠からはじき出します。これはセービング中の体制が相当よくないでできません。もっというと、97年のワールドカップ予選の韓国戦では同様のシュートを決められて(批判も受けてました)いたので、この3年で技術的に大きく成長したのです。

まとめ

いやーというわけでずっと書きたかった記事書けました。20年前の試合なんて覚えている人もほとんどいないかも知れないですが、僕にとっては当時衝撃的で、かつ応援している身としては自分のことのように誇らしい試合でした。

まぁこの決勝の活躍をもってしてもトルシエ監督の評価は変わらずだったんですけどね。トルシエ監督のもとで正GKを獲得するのはもう半年くらい先の話です。

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