「ゴールキーパーの声は神の声」といわれます。
GKにとって、シュートを止めることももちろん大事な仕事ですが、声を出し、コーチングするということも同じくらい大きな仕事で、チームの勝敗に大きく貢献します。
とはいえ、GKを始めたばかりの方は以下のように感じるかたも多いのではないかと思います。
- GKのコーチングって何すればいいのかわからない。
- 声を出すなんて恥ずかしいな。。
- 間違えた指示を出してしまったらどうしようと不安
一方、GKの指導書やインターネット上の動画は多々あるものの、具体的にどういうときにどういうコーチング、声出しをすれば良いのかを解説したものは多くありません。キャッチングはどうやるのか、セービングはどうやるのか、という内容のものは多いんですけどね。
そこで本記事では、
・サッカーでGKを始めたばかりの初心者の方
・小学生などキーパーを始めたばかりの子供を持つ親御さん
向けに、GKのコーチングにはどんなものがあるのか、まずは何から始めていけばいいのか、ということについて解説し、まずは明日の試合は何から始めればよいのか、インプットできる内容になっています。
ご本人のプレーあるいはお子様のプレーに少しでもお役に立てればと思います。
GKのコーチングの種類にはどんなものがあるの?
GKのコーチングの目的は4つあります。
- 自分がプレーするのかしないのか明確にする
- 情報を伝える
- 指示を出す
- 励ます
それぞれ見ていきますね。
(1)自分がプレーすることを伝える
具体例:「キーパー!」「クリア!」
コーチングの1つ目の目的は自分がプレーするのかしないのか明確にすることです。
相手の攻撃を終わらせるために最も効果的な手段はなんでしょう。そうです、GKがボールをキャッチすることですよね。
- 相手がGKとDFの間に縦に蹴ってきたボール
- コーナーキックへの対応
- サイドからのクロスボールへの対応
GKが処理するべきと判断した場合には「キーパー!」あるいは「オッケー!」とはっきりと声を出し自らボールを処理します。
同時にDFは、GKがボールを処理しやすいように、相手選手を体でブロックするなどの対応をし、GKがボールをキャッチすることで確実に相手の攻撃を終了させます。このあたりは普段の練習からDFと連携しておく必要がありますよね。
逆に、GKが処理することが難しいと判断した場合には「クリアー!」あるいはもっと具体的に「外へ出せ!」「戻せ!」などの声を出します。
いずれにせよ、GK自身が自らのプレーでボールを処理するのか、あるいはDFに任せるのかを判断し、コーチングという形で味方に伝える必要があります。
こういうシーンは試合中なんども訪れます。2択の決断で一見シンプルに見えて、GKのプレーの中でも最も難しい判断の1つで、プロ選手でもしばしば判断を誤ります。
それでも大切なのは、一度決断したらその判断に自信をもって、そのプレーが成功するように全力でプレーすることです。
(2)情報を伝える
具体例:「フリー」「きてるぞ!」
コーチングの2つ目の目的。それは「情報を伝える」です。
試合中、一番ピッチ全体を見渡すことができるポジションはどこでしょう?このページを読んでくださっている方には言う間でもないと思います!そうGKですよね。
なぜならば、GK以外のプレーヤーが、ピッチ全体を見渡そうと思うと、360度全て見なければいけないのに対し、GKはチームの最後尾にいるため、180度見るだけで、ピッチ全体が見渡せるからです。
フィールドプレーヤがボールを持っているときは、ボールを全く見ないわけにはいかないので、視野はますます狭まります。
ボールを持った時に相手選手が近づいてきていなければ「フリー!」と声をかけてあげてください。きちんと体制を整え、相手のゴールの方を向き、次のプレーに移る時間が十分にあること伝えることができます。
逆に相手選手が近づいてきているのであれば、「きてるぞ!」と声をかけてあげることで、ダイレクトプレーなど、相手にボールを取られないことを優先した急ぎのプレーを選択する必要があることを伝えることができます。
右後ろからきているのか、真左からきているのか、どのから相手選手が近づいてきているのかまで完結に伝えることができれば尚良いです。
最もシンプルな例を紹介しましたが、他にも例えば、
- ピッチの反対側にフリーな味方の選手がいることを伝える
- 残りの試合時間が少ないことを伝える
など、味方のプレーを補ってあげるために「情報を伝える声」。これが2つ目のコーチングです。
(3)指示を出す
具体例:「あがれ!」「前を向け!」「○○10番!」「右!」
コーチングの3つ目の目的は「指示を出す」です。指示を出して、具体的に味方を動かすための声です。ここでは3つ程例をあげて説明しますね。
1つ目の指示は「あがれ!」です。
これはDF全員の指示になります。相手の攻撃を大きくクリアしたら、まずは大きなピンチを防いだことになり一安心。と言いたいところですが、この瞬間GK以外の選手は全員すぐに動き出し、ディフェンスラインを押し上げる必要があります。ディフェンスラインを押し上げることで、攻撃していた相手選手も合わせて戻らざるを得ません。そのままゴール前に残っていたらオフサイドになってしまうからです。
しかし、長い試合の中では集中力が続かず、この動き出しがすぐにできない場合もあります。その場合には「あがれ!」とチーム全体に声をかけてあげてください。
2つ目の指示は「前を向け!」です。味方が開いてゴールに背を向けてボールを受けたとき。理想はすぐに前を向き、攻撃に転じることです。しかし、味方が前を向いた瞬間に相手選手が近くにいる場合には、すぐにボールを奪われてしまいます。
コーチングの目的の2つ目「情報を伝える」で紹介したシーンに少し近いですが、ここで、具体的に「前を向け」と指示を出してあげることができると、より味方の次の動きを明確にしてあげることができます。
3つ目の指示は「○○10番!」です。前の2つに比べると、少し初心者向けよりは少し難易度が高いかも知れません。
まぁ「○○10番」というのは例なのですが。サッカーの試合における最大のピンチでもある、コーナーキックとゴール前でのフリーキック。ここではGKが様々な指示を出す必要があります。その中でも大切なのはマークをつける指示です。
ボールが蹴られないかを気にしながら、フリーになっている相手がないかを確認します。チームの戦術により、相手にぴったりつくのか、相手がきたときにつくのかといった守り方に違いはあるかも知れませんが、フリーになっている選手を誰が気にするのかを明確にし指示すること。「○○10番」は○○という見方選手が10番を気にするように指示する声になります。
サッカーは当たり前ですが同じ人数でやるスポーツなので、相手がフリーになっているということは、こちらにも余っている選手がいるはずです。全体を見渡し、そこを修正してあげてください。
4つ目の指示は「右!」です。
もちろんこれも「右」には限らないのですが、味方のポジションのズレを修正する指示です。こちらもちょっと難易度高めです。ピッチ全体を見渡し、味方のポジションがもっと右だったら(左だったら)、相手のパスをカットしやすくなる、こぼれたボールを拾いやすくなる、というのを見抜き、実際にディフェンスをその場所にポジションを取るように指示を出します。戦術の理解、あるいは試合中の流れを読む力も必要になってきます。
また、相手のフリーキックの場合には、直接シュートのシュートコースを狭めるために壁を作ります。この壁の立ち位置を修正するのも同じポジションのズレを修正する指示の1つですよね。
(4)励ます
具体的な例:「集中!」「ドンマイ!」
最後4つめのコーチングの目的は「励ます」です。
これはわかりやすいですよね。励ますといっても、褒める、叱る、盛り上げるなど様々な声があります。
例えば味方がミスをしたとき。どんな声をかけるのがいいでしょうか。その味方の性格などにもよるかも知れませんが、やはりミスをして一番落ち込んでいるのはその本人になります。そこは「ドンマイ!」といった声をかけてあげましょう。
またミスとまではいかないまでも、試合の中で味方の集中力が切れていて、本来やるべきことをやっていないときがしばしばでてきます。そういうときには、厳しめの声で「集中!」といった声をかけましょう。
プロ選手が、味方にときに激しく、ときに笑顔で励ます姿は見ててとてもかっこいいですよね。ここは自分の好きな選手がいる方は真似てみるのも面白いと思います。
私自身は、川口能活のファンなので、味方を怒鳴りつける勢いで叱責するところや、反対に両手を広げて「落ち着け」と落ち着かせるのをテレビで見て、真似をしていましたね。(怒鳴りつけるのは良くなかったと思っていますが。。)
コーチングって何から始めたらいいの??
さてここまでゴールキーパーのコーチングを、その目的ごとに具体的なシーンを踏まえて紹介してきました。GKがどのようなコーチング、声を出しているのか、少しはイメージはついてきたでしょうか。
明日から試合でやってみよう!という方もいるかも知れません。しかし、実際にやってみると難しいですよね。
GKはシュートを止める仕事がもともとあり、声を出す余裕ってなかなかないんですよね。それに加えて、声を出すのってちょっと恥ずかしいですよね。コーチングしたけど間違ってしまったらどうしようと不安な気持ちもあります。
そこでまず始めて欲しいのは「あがれ!」の声です。コーナーキックで味方がボールをクリアしたときに、必ず大きな声で、勇気を出して言ってみることにしましょう。
このときは、ボールがゴール前になくて、心の余裕もあると思いますし、状況の判断も難しくなく、失敗したらどうしようという不安も少ないのではないかと思います。それに加えて、自分の「あがれ!」という指示に従って、味方をその通りに動かくことができるので、少しずつ自信として積み重なっていくはずです。
恥ずかしさも、間違ったらどうしようという不安も、経験や失敗を重ねていくことで、絶対になんとも思わなくなります。
プロ選手のコーチング
Jリーグの選手などが実際にどんなコーチングをしているのか、実際に聞いてみたいですよね。しかしJリーグの試合では、サポーターの応援や、そもそもピッチとの距離が遠いこともあり、聴き取ることがかなり困難です。
そんな中、FC東京のGK林彰洋選手のコーチングを、現地で聴き取って文字にしてくださっている記事があったのでリンクしておきます。とても参考になるし、とても面白いです。
https://note.com/pato0122/n/n01842ffa6f6b
キーパーのコーチングにおける心得
本記事は、ゴールキーパーを始めたばかりの初心者の方々向けに、どんなコーチングがあるのかを、できるだけ具体的にまとめてきました。
少しずつコーチングという声を通じてチームの勝利に貢献できるためのきっかけとなれば幸いです。
少し先の話。
コーチングに慣れてくると、自分の声で適切にチームを動かすことができているのだろうか?勝利につながる声を出せているのだろうか?と新たな不安も生まれてくるのではないかと思います。
そんなときに非常に参考になるのが、日本代表GK権田修一選手が監修する本です。
ポジショニング、構え、ステップ、シュートストップ、クロスボール、セットプレー、スロー&フィード、ウォーミングアップ、など各技術要素を、権田本人の写真付きで紹介しています。より実践で使えることを意識した内容になっています。
例えば、ポジショニングに関しては、「相手選手とゴールの中心を結んだ線上に~」といった理論だけでなく、「自分の立ち位置は目印をで確認する」など、経験に基づくコツみたいな内容まで深堀されています。
ちなみに、2016年で権田がまだFC東京時代の本で、写真での実演メンバとして波多野豪が、当時FC東京U-18の選手として出ています。初々しい波多野豪選手の姿も楽しめます。
その中でも、「権田修一のコーチング論」というコラムが全部で7つあり、とても良いことが書いてあります。
- コーチングの説得力は、普段の振る舞いから生まれる
- 言い方を変えるだけで伝わり方が何倍も変わる
- ミスをしてしまった選手にはあえてポジティブな声をかける etc.
本記事を最後まで読んでもらって、明日の試合のコーチングに生かそうと思ってくださった方の次のステップとして、この権田選手の書籍をおすすめして本記事のしめくくりとしたいと思います。
読んでくださりありがとうございました!