Fantasista – 2002.6.3

Fantasista – 2002.6.3
※本コラムは昔運営していた川口能活ファンサイト(深海)で掲載していたコラムを再掲したものです。一部内容が古い可能性がありますがご了承ください。  

眠れない夜を過ごしています。ただいま6月4の夜中の2:15。夜が明ければいよいよ日本vsベルギー。未だに川口がでるか楢崎が出るか分からないけれど、川口が出場することを信じてやみません。

ポーツマスへ移籍して、フロントの理不尽な仕打ちで試合に出れない時期があって、試合から実に2ヶ月以上も遠ざかっていて、一度はワールドカップ出場も危ういんじゃないかとも言われたこともあった。移籍は失敗だったとか言う奴もいた。この半年間、川口にとっても人生で一番つらい時期を経験してたんじゃないかって思う。最初は歓迎してくれたサポーターにはある試合を境に日本へ帰れとののしられ、信用していたマネージャーには裏切られ。試合に出れないどころかユースチームに混じって練習、という屈辱的な仕打ちもあった。きっと他にも想像を絶するようなひどい仕打ちを受けていたに違いない。さらに言葉が通じない環境。愚痴を言う相手がいないこと。これがどんなにつらいことか。四面楚歌。味方が一人もいない世界で、ストレスは全て心の中に溜め込むしかなかった。「朝目がさめて意識が戻るのがつらい」こんな毎日。外食を避けて日本からのレトルト食品で飢えをしのいで、ガソリンを入れるのには隣町までいって、お金を下ろすのは人影の少ない11時頃に行ったって。指名手配中の犯罪者みたいな生活。とっくにその重圧に押しつぶされてもおかしくなかったはず。でも川口は逃げなかった。それでも、毎日の練習トレーニングは欠かさず、一歩家から出れば、笑顔の仮面をかぶることを忘れなかった。

ポーランド戦だって、ワールドカップへ希望をつなぐ、ある意味最後のチャンスだったと思う。ポーランド戦では2ヶ月のブランクを感じさせないプレーで日本の完封勝利に貢献した。ポーツマスでのつらい、苦悩の日々なんて微塵も感じさせなかった。もし、この試合でのプレーがふがいなければ、ワールドカップはもちろん、ポーツマスでの地位も戻ってくることはなかったはず。大きなプレッシャーが川口を強く襲っていたはずだった。でも川口はこの勝負に勝った。強い。ホントに強いんだよ、川口は。

川口の生き方の魅力は、困難を真正面から受け止めて、それに打ち勝って行くこと、かな。高校ナンバーGKが選んだのは当時GKのレベルが一番高くて、試合に出れる可能性が一番低い横浜マリノスだったこと。オリンピック代表で、嫌でも一緒に練習しなければいけないライバルGKをずっと睨みつけていたこと。それからポーツマスへの移籍も。まさに真向勝負。あえて厳しい道を自ら選択することによって、傷ついて、ボロボロになりながらも、這い上がって、サイヤ人みたいに、前よりずっと強くなる。痛々しいけど、これが決して困難から逃げない、川口の生き方なんだって。

フィールド上でまぶしく輝いている分、フィールドの外での自分の大部分を犠牲にしていることも知っている。川口が体重や体脂肪を100g単位で管理していることは有名な話。脂っこいものはまったく口にしない。肉より魚、サラダにマヨネーズやドレッシングは決してかけない。1週間の予定は練習やトレーニングの繰り返しで判で押したような生活。睡眠は確実に7時間以上取って、夜更かしして遊ぶようなことはもちろんない。移動のときは体のバランスが崩れないようにと、たとえスーツでもリュックをしょっている。生活の全てをサッカーに懸けているような。フィールドで輝くためには、私生活で輝くことはできないんだね。

川口能活というのは、日本が初めて生んだ、ゴールキーパーのファンタジスタだと思う。アトランタでのブラジル戦。アジアカップやフランスワールドカップ。大舞台では必ず鳥肌の立つようなプレーを連発。この姿を見てからというもの、誰もが期待しているはず。「川口なら、相手が強ければ強いほど、神懸かり的なプレーを見せてくれる」と。他にこんなにもわくわくするようなプレーを見せてくれるキーパーが日本にいるか?これこそまさにファンタジスタだと思う。楢崎の方が安定感がある??目立ったプレーをしないことが安定感ならそんな安定感なんていらないと思う。積極的な飛び出しとかそういうのは安定したプレーが大前提であってその上のプラスアルファ。そのスーパープレーの前にシュートを正面でキャッチするとか、ハイボールを最高点でとるとか、正確なキックとか、そういう地味な安定したプレーが目立たなくなってしまっているだけ。それで安定感がないとかいうのはとんだお門違い。

なんか話が支離滅裂になってしまったけれど・・・まぁ眠いもので。今3:45。俺は、川口には何度も励まされました。前に見たよりも確実に成長していく川口。海外にいたためなかなか川口のプレーを見る機会がなかったんだけど、初めて川口のA代表でのプレーをみたのが97年6月のクロアチア戦。その前に見たのがオリンピック(96年7月)の川口だけど、大活躍したブラジル戦よりも格段にうまくなってる川口をみてびっくりした。ワールドカップ予選が終わった頃には、またさらに大きくなっていた。そして、もちろん今でも。宇宙が無限に広がりつづけているように、川口もどんどん大きくなっている気がする。人はきっと逆境を乗り越える度に強くなっていくんだろうけど、それを川口は見事に示してくれた。逆境にぶつかって自分を追い込んで、前よりずっと強く大きくなって、なんか筋肉の超回復みたいだけど、川口のそんな姿を見て、何度勇気をもらったことか。自分もやらなきゃ、って。悪いけど、川口能活は他のGKなんかとは背負っているものが違います。大きさが違います。GKとして、人間としてのレベルが違います。