コラム

北朝鮮戦 スーパーセーブ&失点 - 2005.4.3

  ※本コラムは昔運営していた川口能活ファンサイト(深海)で掲載していたコラムを再掲したものです。一部内容が古い可能性がありますがご了承ください。  

スーパーセーブ

後半5分。田中が相手を倒してその早いリスタートから、 金映水がクロス!そのファーサイドに飛び込んだ文人国がダイビングヘッドをするが、 川口が鋭い反応でセーブ!というシーン。

至近距離からのヘディングシュートというのは、 そう簡単に反応できるものではありません。というのは、 もちろん至近距離だから、純粋にボールに反応してる時間がないということ。 もう一つは、普通のシュートが、打つ直前の振り足から大体ボールのくる方向の予想がつくのに対して、 ヘディングはその振り足がないわけで、ボールが頭から跳ね返ってくるまで、 ボールのくる場所がわからない、といった理由からです。 そこでヤマを張ってしまうことがしばしばあるものですが、 北朝鮮戦での川口のこのヘディングへの対処は非常に冷静だったと思います。 それをビデオ解析してみました。

Stage1

この時点ではクロスボールに対してポジションを修正している段階なので、 猛ダッシュで右に向かっているところです。

Stage2

これは文選手にヘディングシュートを打たれた瞬間ですが、 さっきまでのダッシュがウソだったかのように、体は静止し、 ボールが打たれる瞬間を確認しています。 ふいをつかれたシーン等ではついつい止まらないで体が流れてしまいがちですが、 ここでしっかり止まっていないと、シュートに反応することができません。

Stage3

まだこの時点では、ヘディングがどの方向に飛んできているのか、 反応はできていないと思いますが、既に勝負ありです。 これは先ほどの画像から一歩右にステップを踏んだところですが、 この時点で川口は、ゴ ールの自分より右側の範囲の全ての方向にセービングすることができる構えをとっています。

Stage4

ここでやっとボールに反応できた頃だと思いますが、完璧に川口の守備範囲です。

Stage5

セービング後。まぁ確かにバレーボールのトスみたいですが(笑)この画像でのポイントは、 ボールをはじいた瞬間よりもこの画像の方が高くジャンプした状態にいる、 ということです。これはどういうことかというと、 人間はもちろんジャンプする距離というものをどのくらい体に力を入れるか、 で調節することができます。川口はそのジャンプする距離というものを、 Stage3の時点でもう決めてしまっていたのです。GKはシュートを打たれると、 その一瞬でいろいろな判断を下さなければなりません。

  • 「このシュートはセービングしなくても正面で取れるのか?」
  • 「シュートは右に飛んできたのか左に飛んできたのか」
  • 「どのくらいの威力だから、回転がかかっているから、 これはキャッチした方がいいのか?はじいた方がいいのか?」
  • 「途中で相手やDFに触られる可能性は?」

などなど。その一つに

「どのくらい遠くにセービングをする必要があるのか」

というのがあります。(もちろんセービングが必要なシュートがきた場合の話です) 余裕があるときは軽く飛べばいいし、 ギリギリのときは思いっきり体を伸ばして遠くまでセービングする必要があります。 しかし、今回のこのヘディングの状況ではとにかく時間がありません。 ヘディングシュートを打たれた後に、「飛ぶ方向」「セービングをする距離」 の両方を判断して決めていたのでは間に合いません。そこで、Stage3の時点で、 川口はゴールに右半分全域に届く程度の力で踏ん張って、 構えて、シュートが打たれた瞬間に「飛ぶ方向」のみを判断してセービングをしたため、 必要以上にジャンプしているように見えたわけです。 写真でボールをはじいた時点よりも高い位置にいるのは、 シュートが想定していた中でも、もっとも近い位置に飛んできたため、 もっと遠くに飛べる余裕があるから、というわけです。

長い文章ですみません。とにかく、偶然右に飛んでセーブできたシュートではなく、 冷静かつ完璧な対処であったことを伝えたかったわけでした。

失点

失点については一つだけです。

これを見て、誰がニアのシュートが飛んでくることを予想できたでしょうか?

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