ゴールキーパーと身長:高身長=良いGKではない。日本には偉大なGKがいたじゃないか。

ゴールキーパーと身長:高身長=良いGKではない。日本には偉大なGKがいたじゃないか。

「トップレベルで活躍するためにゴールキーパーとして身長はどれくらい必要なのか?」

ゴールキーパーを真剣に志す人であれば一度は考えたことがあることだと思います。皆さんいろいろな意見があるとは思いますが、川口能活信者の僕としては以下のような結論を持っています。

「身長はあるに越したことはないが、ゴールキーパーにはそれ以前に必要な要素がたくさんあり、身長の大きい選手=良いゴールキーパーではない。日本には180cmに満たないが偉大なGKがいたじゃないか。」

本記事では、日本の最高峰のサッカーリーグであるJリーグにおける歴代ゴールキーパーの身長の統計情報から、Jリーグで活躍するゴールキーパーはどのくらいの身長があるのが平均的なのかを調べました。

もちろん、それ以上身長があったからといってJリーガーになれるわけではないし、逆に身長が低い方でもプロのゴールキーパーになることをあきらめるべきではないと思います。あくまで、「身長はあるに越したことがない」の目安を情報として持っておくことが目的です。

また、2021年のJ1リーグのスタッツから、ゴールキーパーを身長が低いグループと高いグループに分類し、そのパフォーマンスを比較しました。「身長が大きい選手=良いゴールキーパー」なのか、1つの断面に過ぎませんが見てもらえればと思います。

Jリーグのゴールキーパーの平均身長

Jリーグの歴代ゴールキーパーの身長の統計データは以下の通りです。データソースはJリーグ公式サイトで、2022年時点でJリーグに所属した全764人のゴールキーパーの身長分布をグラフにしました。

https://data.j-league.or.jp/SFIX03/

Jリーグ歴代GKの身長分布

Jリーグに所属したゴールキーパーの平均身長は184.2cm。中央値も184cmでした。その中から、更に実際にJリーグの舞台で試合に出場したゴールキーパーに限定するともう少し高くなり、平均185.3cm、中央値も185cmでした。

参考までに日本人の30~39歳男性の平均身長の分布をオレンジ色の線で表現しましたが平均より10cm以上も高いですね。

データはこちらを参考にさせていただき、30歳-39歳平均値と標準偏差をもとにグラフを追記しました。

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003224177

結論として、185cm程度の日本人がJリーグのゴールキーパーとしては最も多く、一般的には185cmあるに越したことはないといえそうです。

繰り返しますが、これは185cmないとJリーグで活躍できないというわけではありません。

ゴールキーパーに求められる能力は大きくわけると以下の4つかと思います。

  1. 高い技術力
  2. 高い戦術理解能力
  3. 強いメンタル
  4. 高い身体能力

ゲームの中ならともかく現実世界では、この中で数値化できるのは「4.高い身体能力だけ」です。その中でも身長体重は最も手軽に把握できる数値なので、必要以上に気にしてしまいますが、身長も数ある身体能力のうちの1つに過ぎません。

そもそもJリーグでプロになるための道は大きく以下の3つです。

  • Jクラブの下部組織からの昇格
  • 大学・高校からのスカウト
  • 社会人チームからのスカウト

オープンなトライアウトはほとんど開催されません。何がいいたいかというと、いずれのケースでも身長だけで足切りということはなく、上記の能力が総合的に判断された上でプロになれるかどうかが決まりますので、身長が低い=プロになれないということにはならない、と言えると思います。

身長が低いゴールキーパーはパフォーマンスが低いのか?

もちろんそんなことはありません。もう一度ゴールキーパーに必要な能力を書くと以下の4つです。

  1. 高い技術力
  2. 高い戦術理解能力
  3. 強いメンタル
  4. 高い身体能力

「2.高い戦術理解能力」「3.強いメンタル」に関しては身長は無関係といえます。また、「4.高い身体能力」に関しては、身長も当然1つの要素になるので、身長が大きいことが有利になる面があるかも知れません。

「1.高い技術力」はどうでしょう。例えばセービングをするにあたって相手への威圧感があったり、リーチの長さは有利に働くことがあるかも知れません。しかし逆に足元への反応や、セカンドボールへの反応について高い身長が逆に足かせになる場合もあります。

実際、FC東京の林彰洋選手は195cmと高身長の選手ですが以下のように語っています。

僕は身長が195cmあるので、小柄なゴールキーパーに比べると、セーブしてもう一度立ち上がる動きが遅いのは当たり前だと思っていたんです。小さい選手より1回目でボールに触れる可能性が高くても、セカンドアクションで詰められて失点という状況が多いとすれば、小さい選手の方が有利なのでは?と考えるときもありました。僕にとっては、コンプレックスの一つであり、永遠のテーマでした。

「最初はすんなり入ってこなかった」。FC東京・林彰洋が語る“ジョアン理論”「強がっていたけど…」:https://jr-soccer.jp/2020/01/20/post120102/

ちなみに林選手の記事に出てくるジョアンというのが、今シーズン浦和レッズのGKコーチを務めるジョアン・ミレッコーチです。ミレッコーチの話題の書籍はこちら。

2020年に発売された書籍はKindle Unlimitedでも読めるので契約している方はぜひ!またどこかで別で記事にしたいくらいおすすめ本です。

話を戻すと、ゴールキーパーは機械ではないので、能力の違いよって個の特徴があります。自分の長所、短所を見極めた上で、チームの勝利にいかに貢献するかを考えることの方がはるかに重要です。

「それはわかるけど、そうはいってもね。」という声が聞こえてきそうです。

そこで2021シーズンのJリーグにおける身長とパフォーマンスの関係のデータを見てみましょう。

GKHeight186cm以上平均採点Save%CS%GA90
Shuichi Gonda1876.7963.915.81.42
Masaaki Higashiguchi184×7.173.636.81.29
PaPark Il Gyu180×7.1175.939.50.92
Kim Jin-hyeon1936.7769.426.31.34
Mitchell Langerak1937.0275.255.30.79
Masaaki Murakami185×7.1578.640.50.92
Jakub Slowik1906.7466.918.91.65
Takanori Sugeno179×6.866.922.21.28
Kim Seung-gyu1876.7864.822.91.46
Naoto Kamifukumoto181×6.6660.223.51.32
Kosei Tani1876.9472.729.41.15
Yuya Oki184×6.7564.833.31.06
Jung Sung-ryong1906.9374.442.40.7
Yohei Takaoka181×7.0275.245.50.88
Shusaku Nishikawa183×6.9873.640.61.03
Go Hatano1986.8367.738.71.35
Keisuke osako185×6.6966.322.21.11
Shun Takagi181×6.9770251.46
Daiya Maekawa1916.8675.431.60.91
Hiroki Iikura181×7.0377.538.90.95
Svend Brodersen1886.5660.718.81.62
William Popp1926.8266.721.41.43

J1リーグ2021において、1000分以上試合に出場したゴールキーパー22人のシーズンの平均的なスタッツです。対象のスタッツとデータソースは以下。

  • 平均採点 (https://www.sofascore.com/)
  • Save%(セーブ率。https://fbref.com)
  • CS%(完封率。完封試合数/全試合数。https://fbref.com)
  • GA90 (1試合平均失点。https://fbref.com)
平均採点Save%CS%GA90
186cm以上6.8268.8929.231.26
185cm以下6.9371.1533.451.11

いずれのスタッツも185cm以下のグループのスタッツが、186cm以上のグループのスタッツを上回っていますよね。

もちろんJ1リーグの2021年の結果という1面だけなので、これだけで身長が低い方優位ということはいえませんが、少なくとも身長が多い位ほど、そのパフォーマンスに優位というわけではない、ということはいえると思います。

※統計的には2つのデータのP値が0.05以上であり有意差があるとはいえません。身長が低いグループ、高いグロープに統計的な差は認められないというのが統計的にも結論です。

川口能活と身長

ゴールキーパーと身長というテーマを語る上で、日本歴代最高のゴールキーパーと個人的には思っている、川口能活の話は避けて通れません。

身長のコンプレックスもエネルギーにし日本最高のゴールキーパーへ

川口能活はJリーグデビュー当時は181cmとして選手登録をしていました。しかし実際の身長は180cmにも満たない179cmだったことはファンの間では有名な話です。

https://www.nikkansports.com/soccer/news/202006260001428.html

身長が多くのゴールキーパーと比べて小柄であることに対してコンプレックスを抱き、悩むことも多かったという川口能活。そのコンプレックスを自らの努力によりジャンプ力など他の身体能力を磨き上げることで、その差を埋めるどころか、それを原動力に日本最高のゴールキーパーにまで上り詰めました。

「常に自分は代表クラス、あるいはワールドクラスのGKに比べて身長がないと言われ続けた。高校生まで、身長のことは言われたことがなかった。プロになって言われるようになり、強がっていたけど、内心悔しいというか……」

「そのどうしようもないことを、動きの速さやジャンプで何とかしたい。コンプレックスを克服すると。足りないものを努力するためのエネルギーを、GKを始めたことで知ることができた。エネルギーを出すやり方、手段を学ぶことができた」

引退会見の元日本代表GK川口能活が「身長コンプレックス」を告白:https://www.football-zone.net/archives/147747

「俺は自分のことを小さいとは思っていないよ。」

川口能活は現在JFAのゴールキーパーコーチとしてU-19などアンダーカテゴリのゴールキーパーの指導にあたっています。

そんな川口能活から影響を受けたゴールキーパーの1人が立正大の杉本光希選手です。高3のときのナショナルゴールキーパーキャンプで、川口能活の指導を受けて際のやり取りが、杉本選手に影響を与えているといいます。

一度高3の時のナショナルGKキャンプで一緒になったことで考え方が大きく変わりました。この時、僕は『僕はGKとしては身長が低い(181cm、川口は180cm)のですが』と言ったら、『俺は自分のことを小さいとは思っていないよ。誰よりも飛べば、その大きさはカバーできる』と言われたことが本当に心の奥まで響いて、そこから僕は絶対に自分を小さいと思わないし、相手が190cmだったら、10cm相手より高く飛べばいいというポジティブな発想になることができた」

川口能活からの金言が急成長の糧に…“俺が主人公”だった大学生GKはいかにしてU-22日本代表合宿へ招集されるまでとなったか:https://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=99064

こういう選手が日本のゴールキーパーを支えるようになってくれたらこんなに嬉しいことはないですよね。

あ、川口能活選手の技術指導本、DVD付で現役ゴールキーパーも、ただの能活ファンにもおすすめなのでぜひ!

身長の低いゴールキーパーのプロ選手

身長に関係なく、プロ選手として活躍している選手を紹介します。

菅野孝憲 (コンサドーレ札幌)

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菅野孝憲選手は身長が180cmに満たない179cm。横浜FC、柏レイソル、京都サンガ、そして現在はコンサドーレ札幌と、所属した全てのチームでほぼ全てのシーズンでスタメンとして活躍しています。日本代表選出経験もあります。

圧倒的な存在感や、研ぎ澄まされたポジショニングやセービングを見ていると、とても170代の身長を感じさせません。

朴一圭/パク・イルギュ(サガン鳥栖)

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サガン鳥栖のパク・イルギュ選手も身長は180cm。それでも身長を感じさせないセービングやクロスボールへの対応を見せてくれますが、やはりその特徴は守備範囲の広さ。

高いディフェンスラインの裏の広大なスペースを、その走力と適切なポジショニングによってカバーしたり、チームのビルドアップの起点となるプレーもリーグトップクラスです。

2021年3月30日のベガルタ仙台で記録した8.186kmの走行距離の記録は驚異的!

イルギュ選手と同様に、広い守備範囲とビルドアップへの貢献が特徴である、横浜Fマリノスの高丘選手、ヴィッセル神戸の飯倉選手も身長は181cm。

高い守備技術に加え、戦術理解度および攻撃技術を磨くことが身長が高くないゴールキーパーがトップレベルで活躍するための1つの鍵なのでしょうか。非常に興味深いです。

海外でのあのレジェンドGKも身長は170cm台

ここからは半分ネタですが、かつてメキシコ代表で活躍したホルヘ・カンポスというGKはご存じでしょうか?

ゴールキーパーとして1990年代にゴールキーパーとフォワードの二刀流を体現していた彼の身長は170cm!それでもメキシコ代表としてワールドカップにも出場しています。圧倒的なジャンプ力を生かしたプレーは非常に魅力的でした。

それから欠かせないのが元コロンビア代表のレネ・イギータ。彼の身長も176cm!

もはやネタ動画の定番ですが、スコーピオンセーブや、ボールをキャッチしたら相手陣までドリブル突破したり、FKを蹴ったりともうやりたい放題。しかもこれを代表戦でやってますからね笑

まとめ

ゴールキーパーにとって身長が低いことは不利なのか?というテーマについて向き合った記事でした。

Jリーグの平均身長は185cm。しかし身長は実際にゴールキーパーに求められる能力の1つに過ぎず、185cmあるに越したことはないが、必須条件ではありません

またJリーグ2021のスタッツから身長とパフォーマンスの相関を調べました。その結果、身長が高いからといってパフォーマンスが高くなるということはありませんでした。

また実際にJリーグで185cmの身長がなくてもJリーグでトップレベルで実際に活躍している選手として菅野選手、朴選手らを紹介させていただきました。

以上を踏まえ、個人的な意見で恐縮ですが、伝えたかったのは以下のメッセージです!

「身長はあるに越したことはないが、ゴールキーパーにはそれ以前に必要な要素がたくさんあり、身長の大きい選手=良いゴールキーパーではない。日本には180cmに満たないが偉大なGKがいたじゃないか。(川口能活とか)」