コラム

曽ヶ端inイタリア戦 - 2001.11.21

  ※本コラムは昔運営していた川口能活ファンサイト(深海)で掲載していたコラムを再掲したものです。一部内容が古い可能性がありますがご了承ください。  

11月7日イタリア戦。日本代表GKとして、ピッチにたったのは、イングランド1部リーグのデビュー戦で、右ひざをいためていた川口でもなく、試合当日の朝に足首を捻挫した楢崎でもなく、第3GKとしての地位を固めつつあった都築でもなく、曽ヶ端だった。1-1。イタリア代表にイタリア代表の監督は印象に残った選手として真っ先に曽ヶ端を挙げたという。また、どこの評価を見ても曽ヶ端に好意的な評価が多かった。たしかに、この日の曽ヶ端はポジショニングも良くてシュートは全部正面でとっていたし、攻撃につながるキックは正確だった。しかし、納得がいかないのが、「ハイボールに強い」という評価である。

たしかに、この日の曽ヶ端は目立ったハイボールのミスはなかった。また、曽ヶ端はハイボールをキャッチするときに手をしっかり伸ばしているために、高い位置でとっているように見え、確かに安定してみえる。手を伸ばして高い位置でとる、というのは、ハイボールにおいて、大切な技術である。しかし、よく観察すると、曽ヶ端はハイボールに対するジャンプのタイミングがかなり悪い。キーパーのハイボールの処理の基本は、「最高地点で」である。つまり、ハイボールに対してジャンプして、ちょうど最高点に達した瞬間にボールに触れるようにするのが理想である。最高点に達する前、あるいは、最高点を過ぎ、落下し始めているときにキャッチしてしまうと、空中でのバランスが悪く、ぶつかってくる相手プレーヤーに対抗できない。逆に最高点でボールをキャッチすることができれば、その瞬間は下向きにも上向きにも力はかかっていないので、体が空中で静止した状態になり、キャッチしやすくなる。またキャッチの瞬間の空中でのバランスが安定し、相手の当たりにも強い。

では、イタリア戦の曽ヶ端はどうだったか?最高地点を過ぎ、落下し始めてからキャッチするシーンが何度も見られた。イタリアは親善試合では本気でやることはない、という。そのためか、キーパーがキャッチしようとしているのに対して、競りにいく相手FWは誰もいなかった。しかし、もしこの試合相手が体をぶつけて競りにきていたら・・・。キャッチミスをしていた可能性はおおいにあると思われる。少し前にJリーグで、ジュビロvsアントラーズの試合で、中山が曽ヶ端に対してぶつかっていき、曽ヶ端がボールをこぼしたところをつめて、それがゴールになったシーンがあった。アントラーズ側は猛然とキーパーチャージを主張した。(正確にはキーパーチャージというルールはなくなっているので、危険なチャージ)確かに、あのプレーでファールを取ってもらえないのなら、キーパーなんてやっていられない。しかし、少なからずその原因は曽ヶ端にもあるのではないかと思う。曽ヶ端はこのときも、わずかに目測を誤りほんのわずか早く飛んでしまっていた結果、キャッチの瞬間はすでにわずかに落下し始めていた。そのせいで空中でのバランスが崩れた状態で、しかも、めいいっぱい腕を伸ばしてボールをキャッチしていた。これが、レフェリーには曽ヶ端が中山にぶつかられる前に体勢をくずしていたように見えたのだ。ミスジャッジではあると思うがレフェリーを攻めることはできないと思う。

川口はどうだろうか。GKとしては大きくない179cmというその身長を補うために、専属のトレーナーについて、ジャンプ力の向上に日々努めてきた。川口のジャンプ力が、日本代表のスポーツテストでトップの数字を記録したことは、まさにその成果といっていいだろう。また、ジャンプのタイミングも毎日の練習や試合経験によって研ぎ澄まされていて、寸分のくるいもなく、ジャンプの最高点でボールをつかむことができる。さらにいえば、川口はJリーグでもトップクラスのキャッチの技術を持っているため、ハイボールのキャッチミスは少ない。これら、必要な技術をほぼ完璧にそろえている川口は、ハイボールへの安定感は間違いなく日本一といえる。

タリア戦の曽ヶ端のプレーは決して悪かったわけではない。ただ、イタリア戦で、曽ヶ端はその評価を急激に上げるような、そこまでの活躍はしていない、ということを強調しておきたかった。特にハイボールに関しては。

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