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キーパー出身の監督はわずか2%?少ない理由や、Jリーグの歴代GK出身監督まとめ。

2021年11月、FC東京の長谷川健太監督の辞任にともない、森下申一GKコーチが2021シーズン終了まで監督としてチームの指揮を執ることになりました。

https://www.fctokyo.co.jp/news/13002

森下申一GKコーチといえば、現役時代はGKとしてジュビロ磐田や京都パープルサンガで活躍されていました。また、引退後はGKコーチとして磐田や京都で指導し、2019年からはFC東京でもGKコーチに就任していました。

元プロサッカー選手出身の監督は多いですが、GK出身のサッカー監督ってあまり聞かないような気がしますよね。森下監督のニュースがとても新鮮に感じました。

そこで、本記事ではJリーグの歴代監督の中からキーパー出身の監督を紹介します。また、本当に他のポジションに比べ、GK出身のキーパーは、本当に少ないのか。そして少ないとするならば、なぜ少ないのかを考察しました。

現役時代GKだった監督の割合はわずか1.6%!!

Jリーグの歴代監督、約400名の現役時代のポジションを調査し、その割合を調べました。

以下のWikipediaの情報を元に、現役時代のポジションを集計。複数のポジション出身の監督は複数回カウントしました。

Jリーグ監督経験者

その結果、GK出身者の割合はわずか1.6%でした!すごく単純に考えて全サッカー人口のうち、約10%近くはGKと考えて大きく間違っていないはずです。選手歴なしの18.6%を差し引いても、割合は2.0%程度なので、10%に比べ明らかに少ないですよね。

以上よりGK出身の監督は、他のポジションと比べても少ないといってよいと思います。

なぜゴールキーパー出身の監督は少ないのか?

ゴールキーパー出身の監督が少ないのはやはり志向の問題だと思います。

スペシャリストとマネージャー。

私はIT業界で仕事をしていますが、IT業界でも少し似たような悩みがあります。マネージャーを目指すのか、それともスペシャリストとして専門分野を極めるのか、という悩みです。

  • スペシャリスト…ある特定分野に深い専門知識があり、その専門知識を生かして目標達成に貢献する人
  • マネージャー…管理職として、目標に向かってみんなが能力を発揮できるよう育成、サポートを行う人

あの有名なドラッカーも「マネジメント」とは組織の成果に責任を持つことであり、スペシャリストもマネージャーも「マネジメント」の役割を担うべきといっていますね。

つまり、スペシャリスト、マネージャーのどちらも組織の成果に責任を持つ必要があります。成果とは、サッカーでいうと各コンペティションで結果を残すことですよね。

どちらが上、ということはなく、どちらも必要な役割であり、自分の志向に合わせて選ぶことが大切です。つまり自分が何が得意で何が得意でないかあるいは何をやりたくて、何をやりたくないか次第ということです。

それではなぜゴールキーパー出身の監督は少ないのか。

ゴールキーパーは、他のポジションと比べてもスペシャリスト志向になりやすい。

練習はゴールキーパーだけでやる時間が圧倒的に多く、その中で自分の技術を極めていくことに喜びを感じます。

フィールドプレイヤーと関わる機会が少なく、ゴールキーパーのことはゴールキーパーにしか理解されないと感じる。ある程度成長してくると、更なる成長(=専門性の向上)を外部のコミュニティや外部セミナーなどに求めるようになります。だから「DFスクール」にくらべて「GKスクール」の方が多いのだと思います。

第一線を退いたあとには、マネージャーに相当する監督を目指すのではなく、スペシャリストとしてGKコーチとなり、その技術を受け継ぎ、後進を育てたい。そしてその後進のゴールキーパーには自分が到達したことのないレベルを見て欲しい。ITエンジニアにも通じる、まさにスペシャリストの志向だと思います。

近年では、ゴールキーパーを含めたビルドアップなど、ゴールキーパーが攻撃の戦術に組み込まれることが多くなりました。とはいっても、ビルドアップへの貢献も、セービングなどゴールを守るための基本的な技術があってこそです。

その専門技術の向上に、ある程度の時間と情熱を注ぎこむ必要があり、ゴールキーパーを志す選手達は自ずとスペシャリスト志向になっていきます。ですので、ゴールキーパーが監督ではなく、生涯スペシャリストとしてGKコーチを目指す流れは今後も大きくは変わらないのだと思います。

「ゴールキーパー放送局」というYouTubeチャンネルでも、高木さんが、ゴールキーパー出身の監督がもって出てくれば、GKの地位も上がるのでは、という旨の発言をされていました。

日本はサッカーに限らず、スペシャリストよりもマネージャーの方が地位が高く、給与も高くなりがちですよね。GK出身のマネージャーが出てくるのもそうですが、そもそもスペシャリストの価値が広く認められるようになって欲しいと思います。

Jリーグのキーパー出身の歴代監督は8人!

今井雅隆(福岡 2002シーズン開始-シーズン途中 徳島 2007 沼津 2020-)

現在、アスルクラロ沼津の監督を務める今井雅隆。

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現役時代は、本田技研(現JFL Honda FC)でプレーをしていました。まだJリーグが始まる前の時代です。

1989年から本田技研で監督としてデビューし、その後フィリピンやマカオの代表監督も務めています。これは日本人として初めてのことです。

監督歴

  • 1989-1992 本田技研工業
  • 1995-1997 名古屋グランパスエイトサテライト
  • 2001 フィリピン代表
  • 2002 アビスパ福岡
  • 2003-2004 マカオ代表
  • 2006 ジュビロ磐田サテライト
  • 2007 徳島ヴォルティス
  • 2010-2019 モンテディオ山形ユース
  • 2020- アスルクラロ沼津

高祖和弘(鳥栖 2000-2001)

2人目は、2000年~2001年にサガン鳥栖の監督を務めた、高祖和弘です。

1981年~1991年にガンバ大阪の前身である、松下電器でGKとしてプレーしていました。現在は、履正社医療スポーツ専門学校サッカーコース長兼サッカー部監督を務めています。

Jリーグ監督歴

  • 2000-2001 サガン鳥栖

フリードリッヒ・コンシリア(G大阪 1997シーズン途中-1998シーズン途中)

1997年~1998年にガンバ大阪の監督を務めたフリードリッヒ・コンシリア。この人は現役時代すごいGKだったんです。

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オーストリア代表として84試合に出場!1978年、1982年のワールドカップにも正GKとして出場しています。白黒写真なのも味がありますね。ガンバ大阪の他のオーストリアでも監督歴があったり、U21のオーストリア代表のGKコーチの経験もあります。

Jリーグ監督歴

  • 1997-1998 ガンバ大阪

マザロッピ(名古屋 監督代行=1999シーズン途中)

1999年に、わずか2試合ですが名古屋グランパスの指揮をとったマザロッピ。

現役時代はグレミオやヴァスコ・ダ・ガマなどブラジルのクラブでGKとして活躍。グレミオでは、コパ・リベルタドーレスを制し、南米ナンバー1クラブのタイトルにも貢献しています。

日本では、GKコーチとしてJリーグで複数のクラブを指導。横浜フリューゲルス、名古屋グランパス時代に、楢崎正剛の若いころを指導した印象がとても大きく残っています。

名古屋グランパスでは暫定監督として2試合の指導にとどまりましたが、ブラジルに帰国後は監督として複数のクラブを率いていますね。

Jリーグ監督歴

  • 1999 名古屋グランパス


望月一頼(広島 2006シーズン途中)

2006年にサンフレッチェ広島の暫定監督として2か月ほど指揮したのは、望月一頼。

当時サンフレッチェ広島のGKコーチを務めていましたが、成績不振で解任された当時の小野武監督に代わり、2006年4月~6月のドイツW杯のリーグ中断期間までの、約2か月間チームの監督を務めました。

望月さんといえば、監督としてよりもやはりGKコーチとしての活躍が素晴らしい。サンフレッチェ広島で長年GKコーチを務められているのと、1998年~2001年にはフィリップ・トルシエ監督率いる日本代表のGKコーチとして、シドニーオリンピックやアジアカップ2000に帯同しています。

横山謙三(浦和 監督=1994 総監督=2000シーズン途中-シーズン終了)

Jリーグ初期の浦和を率いていた横山謙三。

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GKとしての実績は抜群です。浦和レッズの前身である、三菱重工で活躍し、日本代表としても49試合に出場!

現役引退後は監督として三菱重工をけん引します。1988-1991には日本代表の監督も任されています。日本人GK経験者の中では、監督として最も実績のある人物かも知れません。

Jリーグ監督歴

  • 1994 浦和レッズ
  • 2000 浦和レッズ

エメルソン・レオン(清水 1992-1994シーズン途中 V川崎 1996シーズン途中-シーズン終了 神戸 2005シーズン途中)

続いてはJリーグで3チームの指揮を執ったレオン監督です。

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現役時代は、ブラジルの各クラブを渡り歩き数々のタイトルを獲得するだけでなく、ブラジル代表として106試合も出場した、輝かしい実績を持っている方です。

監督としては、なんと33チームも率いており、Jリーグのチームも3チーム率いています。Jリーグ創世記には清水エスパルスの監督を務めていますが、その前に監督を務めていたキンデ・ゼ・ピラシカーバからあの「クモ男」の異名をとる、シジマークを獲得していますね。

当時はまだJリーグに外国人GKは少なかったのですが、GKの補強の大切さを、GK経験者のレオン監督だからこそ知っていたということでしょうか。

Jリーグ監督歴

  • 1992-1994 清水エスパルス
  • 1996-1997 ヴェルディ川崎
  • 2005 ヴィッセル神戸

森下申一(FC東京 2021シーズン途中-シーズン終了)

最後は森下申一監督。2021年にFC東京の暫定監督を務めたのは冒頭でお伝えした通りです。

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現役時代は、ジュビロ磐田とその前身のヤマハ発動機、および京都サンガで活躍していました。

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2021年にFC東京の暫定監督を務めはしましたが、基本的にはGKコーチとしてのキャリアを歩まれています。ジュビロ磐田、京都サンガを中心にGKコーチを務めています。川口能活がジュビロ磐田に所属していた期間も、主に森下コーチに指導を受けていました。

まとめ

最後まで読んでくださってありがとうございます。まとめますね。

  • やはりゴールキーパー出身の監督は少なく、Jリーグ歴代監督のわずか1.6%!
  • ゴールキーパーは現役時代のチームへの関わり方から、GKコーチとして、スペシャリストを志向する方が多いのではないか。
  • Jリーグの歴代監督のうち、GK出身はたったの8人。今井、高祖、コンシリア、マザロッピ、望月、横山、レオン、森下

現役を引退したゴールキーパーが、スペシャリストとしてGKコーチを選択する傾向は今後も変わらないと思います。であれば、スペシャリストとしてのGKおよびGKコーチの価値がもう少し認められるように、今後も少しずつ情報発信していきたいと思います!

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