安定感~クロスボール~ – 2001.10.25

安定感~クロスボール~ – 2001.10.25
  ※本コラムは昔運営していた川口能活ファンサイト(深海)で掲載していたコラムを再掲したものです。一部内容が古い可能性がありますがご了承ください。  

GKの最も大切な要素の一つ「安定感」。 安定感のないGKは味方からの信頼を得ることができない。 安定感がないとフィールダーは安心してゴールを任せることができないので、 余計な負担がかかってしまう。逆にGKが安定しているということは、 チーム力の大幅なアップに直接つながることになる。 川口は、しばしば「安定感がない」と批評されることが多かった。 特にハイボールの安定感に関しては、ライバルの楢崎や高桑と比べると、一番劣っている、 といった風潮の報道が目立つ。たしかに、 楢崎や高桑は185cmや190cmという長身ということもあり、 ハイボールでは179cmの川口に比べ安心して見ていられる気がする。 しかし、それはあくまで先入観、シロウトの見方である。 川口は決して高いとはいえないその身長を補うために、ジャンプ力、 ハイボールに対するジャンプのタイミング、ボールをキャッチやパンチングする技術、 そして当たりの強さ、その全てを研ぎ澄ますことによって、 海外の190代の長身FWにも競り負けないハイボールの強さを誇っている。

安定していると言われるキーパーの中には、 クロスボールに対してただあまり飛び出していないだけ、 というキーパーも多い。川口はその守備範囲の広さから、 普通のキーパーが飛び出さないようなボールに対しても飛び出している。 GKも人間。いくら、GKはミスをしてはいけないポジションとはいっても、 どうしてもミスはしてしまう。川口のように、 飛び出す回数が多ければ、その分ミスも増える。 反対に飛び出さなければミスはしないし、そうすれば、「安定感がある」と言われる。 しかし、それは本当に安定感といえるのだろうか?? そんな安定感が果たしてチームにとってプラスになっているのか? センタリングに対しては、GKが確実にキャッチするのが一番の処理方法である。 川口が飛び出して、何もなかったかのようにキャッチして、 一体どれだけDFが、チームが助かっているか、といった点は全く注目されず、 反対に注目されるのは、川口のミスばかり。 逆に、飛び出せるようなボールに飛び出さず、DFに余計な負担がかかっているとしても、 目に見えたミスさえしなければそちらの方がいいGKだと言われてしまうのだ。

川口の昔の試合と今の試合を比べてみて欲しい。 たとえば、97年の日韓戦(1-1カズのPKで同点) でユ・サン・チョルに決められたCKキックからのヘディングシュート。 それを川口は99年のイラン戦では、全く同じようなシュートに対して、 飛び出し、体を当てに行くことによって、ブロックして防いでいる。 しかも相手は、当時アジアNo.1FWといわれていたダエイである。 このことから、川口のクロスボールに対する守備範囲は年々確実に広がっているといえる。 もちろん、それは川口が毎日休むことなく、練習やトレーニングに励んでいるからに他ならない。 イングランドは世界で一番FWのあたりが厳しいリーグだといわれる。 1部リーグ(プレミアリーグの下部にあたる)とはいえ、 川口にとって、ハイボールの処理がJリーグのときよりも厳しくなるのは間違いない。 しかし、逆にいえば、川口のハイボールに対する安定感を証明する最高のチャンスでもあるので、 是非がんばって欲しい☆

話は少しそれたが、GKに対して一番の理解を示しているといわれるイングランドでは、 キーパーがハイボールをキャッチすると、スタジアムから拍手が沸きあがるという。 キーパーをやったことのある人なら分かると思うが、ハイボールの処理は、 簡単に見えて、実は最も難しい技術の一つである。それは上に挙げたような、 キャッチの技術、読み、ジャンプのタイミング、当たりの強さなど、 様々な要素が絡んでくるからである。また、ハイボールを落とすというのは、 誰の目でみても明らかなミスであり、周りからはキャッチして当然といった目で見られるので、 そういった精神的プレッシャーも大きい。 イングランドのサポーターはそういったハイボール処理の難しさを知っているので、 そのような拍手が起こるのだ。

そういった素晴らしい環境であるからこそ、イングランドからは、 数々の名キーパーが生まれている。GKのハイボールに対する安定感を比べるのならば、 単純に、身長や、ハイボール対するミスの数などで比べるのではなく、 こういったことを全て考慮した上で、慎重に評価して欲しいと願う。 そうした周りの理解が日本のGKのレベルアップに確実につながる。