横浜Fマリノスの優勝で幕を閉じた2022年のJ1リーグ。昨シーズンに引き続き、2022年シーズンのJ1リーグのゴールキーパーのスタッツをまとめました。J1リーグのゴールキーパーのスタッツは、なかなかまとまったものがないので、ゴールキーパー好きの皆様の参考になればと思います。
尚、今年もデータソースは、https://fbref.com/ です。
J1リーグセーブ率ランキング2022 ベスト3!
最初に紹介するスタッツはセーブ率。枠内のシュートのうち、ゴールキーパーが止めたシュートの割合です。主観が入らないスタッツの中で、最もチームへの貢献度を表すスタッツなのではないかと思っています。
この本は私の大好きな本なのですが、データスタジアムのJリーグの様々なデータを統計学的な解析を行い、Jリーグにおける様々な選手の特性や、私たちが普段から抱いているよう疑問を統計的に明らかにしてくれる非常に面白い本です。ゴールキーパーに関するデータも多数紹介されています。
この本が素晴らしいのは、データスタジアムで提供されている200を超える項目のプレーデータのうち、どのプレーの組み合わせがチームの得点、失点につながるかを考察している点です。プレーデータというのは、例えばショートパス成功率、ATでの被ファイル数、横方向へのパス数、ゴールキーパーでいえばセーブ率などが例ですね。
そこでゴールキーパーのプレーの中で、明確に統計学的な関連があったのは、「セーブ率が高ければ失点が低い」ということのみらしいのです。つまり、このセーブ率こそが最もゴールキーパーのチームへの貢献度を表す指標だといえるということだと思います。
話が逸れましたが、セーブ率は、出場試合数が少ないとあまり正確なデータになりません。極端な話、1試合に出場して、被シュート1本、セーブ数1本のゴールキーパーはセーブ率100%でランキング圧倒的トップです。公平なランキングとするため20試合以上出場したゴールキーパーを対象としています。(16選手が該当)
1位:上福元直人 | Naoto Kamifukumoto 76.8%
- 国籍:日本
- 誕生日:1989年11月17日
- 身長/体重:182cm/76kg
- 所属チーム:京都サンガFC(大分トリニータ→FC町田ゼルビア→東京ヴェルディ→徳島ヴォルティス→京都サンガF.C.→) ※2022年シーズン時点
- 代表歴:-
1位は京都の上福元選手。2022年シーズンの京都サンガに移籍し、正GKの座を射止めると、年間を通してチームに貢献。チームはJ1J2のプレーオフに回るも、1失点に抑えチームのJ1残留に貢献しています。その貢献度を表しているのがこのセーブ率76.8%という数字にも表れていますよね。
その活躍が買われ、2023年は川崎フロンターレに移籍することが決定。チョン・ソンリョンが君臨するゴールを自分のものにできるのか。注目したいところです。
2位 菅野孝憲 | Takanori Sugeno 73.7%
- 国籍:日本
- 誕生日:1984年5月3日
- 身長/体重:178cm/75kg
- 所属チーム:北海道コンサドーレ札幌(横浜FC→柏レイソル→京都サンガ→)
- 代表歴:日本代表(2009~)
2022年シーズンの札幌は10位フィニッシュと悪くない結果。しかし、チームの失点は55とワースト2位。そんな中で、菅野の活躍が目立ったシーズンでした。シーズン途中、中野選手にスタメンを奪われた時期もありましたが、シーズンを通して27試合に出場しました。
菅野選手の26節の鳥栖戦の好セーブはこちらをご覧ください!
3位 大迫敬介 | Keisuke Osako 72.2%
- 国籍:日本
- 誕生日:1999年7月28日
- 身長/体重:187cm/86kg
- 所属チーム:サンフレッチェ広島(-)
- 代表歴:日本代表(2019~)
3位は広島の大迫選手です。広島は開幕5戦未勝利という最悪なスタート。そこで広島は、そこまで正GKで起用していた林卓人に代えて、大迫をスタメンで起用する決断をします。その後広島の調子は上向き、最終的には優勝争いに絡み、3位フィニッシュを飾っています。
下記記事を書いた時点では、大迫のおかげでチームの調子が大きく上向いたとはいえない、といった考察をしましたが、シーズンが終わってみたセーブ率が70%を超えており、結果として大迫の貢献度はかなり大きかったといえると思います。
影の1位:東口順昭 | Masaaki Higashiguchi 78.4%
- 国籍:日本
- 誕生日:1986年5月12日
- 身長/体重:184cm/78kg
- 所属チーム:ガンバ大阪(アルビレックス新潟→)
- 代表歴:2011年~
実はセーブ率1位はガンバ大阪の東口選手。ただし、本ランキングは20試合以上出場した選手を対象としているため、19試合出場の東口選手は対象に含まれません。
東口選手にとって、2022シーズンは、開幕前に負傷し開幕スタメンを一森選手に譲るという最悪のスタートでした。ガンバ大阪は、一森、石川、加藤の3選手がゴールを守り、いずれも活躍を見せており、東口選手も嬉しい反面複雑な心境だったことだと思います。
しかし、6月にスタメンに復帰し、その後はゴールを守り続けます。78%という素晴らしいスタッツなので、併せて紹介させていただきました。
J1リーグ2022 セーブ率ランキング一覧
J1リーグの2022年シーズンにおけるセーブ率ランキングは以下の通りです。20試合以上出場した選手を対象としています。全15選手!
選手名 | 所属チーム | セーブ率 |
---|---|---|
上福元直人 | 京都サンガ | 76.8 |
菅野孝憲 | コンサドーレ札幌 | 73.7 |
大迫敬介 | サンフレッチェ広島 | 72.2 |
三浦龍輝 | ジュビロ磐田 | 71.7 |
高丘陽平 | 横浜Fマリノス | 71.1 |
キム・ジンヒョン | セレッソ大阪 | 70.8 |
谷晃生 | 湘南ベルマーレ | 70.8 |
権田修一 | 清水エスパルス | 70.6 |
ミチェル・ランゲラック | 名古屋グランパス | 69.9 |
クォン・スンテ | 鹿島アントラーズ | 69.7 |
西川周作 | 浦和レッズ | 68.8 |
朴一圭 | サガン鳥栖 | 68.4 |
ヤクブ・スウォビィク | FC東京 | 66.4 |
村上昌謙 | アビスパ福岡 | 64.6 |
チョン・ソンリョン | 川崎フロンターレ | 62.2 |
J1リーグ2022 セーブ数ベスト3
次に紹介するのがセーブ数というスタッツ。単純明快ですね。シーズンを通して何本のシュートを防いだのか。サッカーが点を取り合うゲームである以上、ゴールキーパーのセーブは、フィールドプレーヤーの得点に匹敵する価値があるともいえますよね。
それではランキングを見ていきましょう。
1位:権田修一 | Shuichi Gonda 116セーブ
- 国籍:日本
- 誕生日:1989年3月3日
- 身長/体重:187cm/83kg
- 所属チーム:清水エスパルス(FC東京→SVホルン→サガン鳥栖→ポルティモネンセ→)
- 代表歴:日本代表(2010~)
2022年のJリーグで最もセーブ数が多かったゴールキーパーは、ワールドカップでの活躍が記憶に新しい日本代表GK、権田選手です。そのセーブ数は116!!ダントツのトップです。それでも失点数は54とリーグワースト3位。この数字をゴールキーパーの孤軍奮闘と捉えるのか、あるいはシュートを打たせすぎと捉えるか。
シュートを打たせないこともゴールキーパーの仕事の一つと考えると、少し物足りなさを感じるかも知れません。
チームは残念ながら降格。2023シーズンはJ2に戦いの舞台を移します。海外移籍を探るも権田選手も残留することになり、J2の舞台で1日も早いJ1復帰を目指す形になります。
2位:三浦龍輝 | Ryuki Miura 99セーブ
- 国籍:日本
- 誕生日:1992年5月17日
- 身長/体重:181cm/75kg
- 所属チーム:ジュビロ磐田(柏レイソル→AC長野パルセイロ→)
- 代表歴:-
セーブ数で2位の成績を収めたのがジュビロ磐田の三浦龍輝選手。数々のビッグセーブでチームを幾度となく救いました。その結果がこの99セーブです。
しかし、残念ながらジュビロ磐田も2022シーズンでの成績が最下位の18位。チームは早々に降格を決めてしまいました。
2023シーズンはキーパーコーチに川口能活さんが就任し、新たなスタートを切る形になります。もう一皮むけた三浦選手が見られる日がくるかも知れません。
3位: 上福元直人 | Naoto Kamifukumoto 97セーブ
3位はセーブ率に続きランクインしている京都の上福元選手です!
セーブ数でランクインしている3人のゴールキーパーが所属するチームの順位はJリーグ2022シーズンにおいてはワースト3。京都はなんとか残留を果たしましたがリーグ16位です。
セーブ数が多いということは一見良いことに見ますが、実際はそれだけシュートを打たれる回数も多く、失点も多く、チームに順位も良くない場合が多い。セーブ数というのはなんとも評価しづらいスタッツになっています。
しかし、上福元選手の場合、チームの失点数は38で、これは横浜、名古屋に続く3位の成績なんですよね。個人としても、セーブ数に加え、セーブ率もリーグトップクラス。 J1リーグ2022 セーブ率ランキング一覧
それらを踏まえると、スタッツから見る限り、2022シーズンの上福元選手は、ゴールキーパーの中で最もチームの守備に貢献したゴールキーパーといえるかも知れません。
J1リーグ2022 セーブ数ランキング一覧
J1リーグの2022年シーズンにおけるセーブ数のランキングは以下の通りです。
選手名 | 所属チーム | セーブ数 |
---|---|---|
権田修一 | 清水エスパルス | 116 |
三浦龍輝 | ジュビロ磐田 | 99 |
上福元直人 | 京都サンガ | 97 |
朴一圭 | サガン鳥栖 | 91 |
高丘陽平 | 横浜Fマリノス | 86 |
キム・ジンヒョン | セレッソ大阪 | 86 |
ヤクブ・スウォヴィク | FC東京 | 81 |
大迫敬介 | サンフレッチェ広島 | 77 |
西川周作 | 浦和レッズ | 76 |
谷晃生 | 湘南ベルマーレ | 76 |
東口順昭 | ガンバ大阪 | 76 |
菅野孝憲 | 北海道コンサドーレ札幌 | 74 |
ミチェル・ランゲラック | 名古屋グランパス | 72 |
クォン・スンテ | 鹿島アントラーズ | 69 |
チョン・ソンリョン | 川崎フロンターレ | 56 |
村上昌謙 | アビスパ福岡 | 52 |
佐々木雅士 | 柏レイソル | 51 |
前川黛也 | ヴィッセル神戸 | 48 |
一森純 | ガンバ大阪 | 36 |
飯倉大樹 | ヴィッセル神戸 | 32 |
J1リーグ2022 防御率ベスト3
やはり失点の少なさという指標は欠かせません。防御率、つまり1試合あたりの失点数のベスト3を紹介します。ここでも20試合以上出場のゴールキーパーを対象としています。
1位:ミチェル・ランゲラック | Mitchell Langerak 31失点(0.97/試合)
- 国籍:オーストラリア
- 誕生日:1988年8月22日
- 身長/体重:193cm/80kg
- 所属チーム:名古屋グランパス(メルボルン・ビクトリーFC→サウス・メルボルンFC→ボルシア・ドルトムント II→ボルシア・ドルトムント→VfBシュトゥットガルト→レバンテUD→)
- 代表歴:オーストラリア代表(2013~)
2021シーズンは記録ずくめのシーズンでしたが、今シーズンも高いレベルのプレーを継続していることが分かりますね。トップレベルのゴールキーパーでは、1試合あたりの失点が1以下というのが一つの目安と考える場合が多いです。2021シーズンに続き達成しています。
チームは8位と中位ですが、失点数に限っていえば、チャンピオンの横浜Fマリノスと並び1位の35失点です。ハイレベルですね。
2位: 上福元直人 | Naoto Kamifukumoto 31失点(1.02/試合)
ここにも名前が出てきました、京都の上福元選手。失点数という指標でも総合2位です。16位のチームにおいて、この成績は素晴らしい。
3位: 高丘陽平 | Yohei Takaoka 34失点(1.03/試合)
- 国籍:日本
- 誕生日:1996年3月16日
- 身長/体重:181cm/72kg
- 所属チーム:横浜Fマリノス(横浜FC→サガン鳥栖→)
- 代表歴:-
2位の上福元選手に僅差で3位につけるのが、2022シーズンチャンピオン、横浜Fマリノスのゴールキーパー高丘選手です。横浜Fマリノスのようにゴールキーパーにファーストアタッカーとしての役割を求められるチームにおいて、失点数も最小に抑えるというのは簡単なことではありません。
攻守に渡り、貢献度が大きい高丘選手は、間違いなく優勝の立役者の一人といえますよね。Jリーグアウォーズのベストイレブンへの選出も納得です。
2023シーズンは、自身初めての海外挑戦。MLSのバンクーバー・ホワイトキャップスへの移籍が決定的とのこと。マリノスにとっては痛手ですが、海外挑戦を応援したいと思います。
J1リーグ2022 防御率ランキング一覧
J1リーグの2022年シーズンにおける防御率のランキングは以下の通りです。
選手名 | 所属チーム | 防御率 |
---|---|---|
ミチェル・ランゲラック | 名古屋グランパス | 0.97 |
上福元直人 | 京都サンガ | 1.02 |
高丘陽平 | 横浜Fマリノス | 1.03 |
大迫敬介 | サンフレッチェ広島 | 1.11 |
キム・ジンヒョン | セレッソ大阪 | 1.13 |
西川周作 | 浦和レッズ | 1.13 |
谷晃生 | 湘南ベルマーレ | 1.13 |
菅野孝憲 | 北海道コンサドーレ札幌 | 1.15 |
村上昌謙 | アビスパ福岡 | 1.15 |
チョン・ソンリョン | 川崎フロンターレ | 1.19 |
クォン・スンテ | 鹿島アントラーズ | 1.26 |
ヤクブ・スウォヴィク | FC東京 | 1.27 |
朴一圭 | サガン鳥栖 | 1.29 |
権田修一 | 清水エスパルス | 1.51 |
三浦龍輝 | ジュビロ磐田 | 1.51 |
佐々木雅士 | 柏レイソル | 1.55 |
J1リーグ2022 クリーンシート数
最後に見ていくスタッツはクリーンシート、つまり無失点に抑えた試合数のランキングを見ていきます。
1位:ヤクブ・スウォビィク | Jakub Słowik 14完封
- 国籍:ポーランド
- 誕生日:1991年8月31日
- 身長/体重:190cm/82kg
- 所属チーム:ベガルタ仙台(スパルタ・シャモトゥウィ→スパルタ・オボルニキ→ヤギエロニア・ビャウィストク→ヴァルタ・ポズナン→MKSポゴニ・シュチェチン→シロンスク・ヴロツワフ→)
- 代表歴:ポーランド代表(2013~)
2022シーズンで最もクリーンシートが多かったのは、FC東京のヤクブ・スウォビィク選手でした!スウォビィクはレベルの高いプレーをシーズンを通して継続。
一方、失点数は42と決して少なくないんですよね。きっちり完封勝利をあげる試合がある一方で、大量失点での敗戦も多いということでしょうか。確かに、5失点での敗戦が2試合あり、3失点以上の試合も5試合を数えます。ゴールキーパー個人の問題だけではありませんが、FC東京はシーズンを通じた安定した守備というのが一つの課題になりそうです。
2位は名古屋のランゲラックと横浜の高丘が13完封で並んでいます。二人は防御率でもトップ3だったので、納得の結果ですよね。
J1リーグ2022 クリーンシート数ランキング一覧
J1リーグの2022年シーズンにおけるクリーンシート数のランキングは以下の通りです。
選手名 | 所属チーム | クリーンシート数 |
---|---|---|
ヤクブ・スウォヴィク | FC東京 | 14 |
ミチェル・ランゲラック | 名古屋グランパス | 13 |
高丘陽平 | 横浜Fマリノス | 13 |
チョン・ソンリョン | 川崎フロンターレ | 12 |
朴一圭 | サガン鳥栖 | 12 |
大迫敬介 | サンフレッチェ広島 | 11 |
西川周作 | 浦和レッズ | 10 |
谷晃生 | 湘南ベルマーレ | 10 |
菅野孝憲 | 北海道コンサドーレ札幌 | 10 |
キム・ジンヒョン | セレッソ大阪 | 9 |
東口順昭 | ガンバ大阪 | 8 |
上福元直人 | 京都サンガ | 8 |
村上昌謙 | アビスパ福岡 | 8 |
クォン・スンテ | 鹿島アントラーズ | 8 |
権田修一 | 清水エスパルス | 7 |
まとめ
2022年のJ1リーグにおけるゴールキーパーの守備への貢献度を、セーブ率、セーブ数、防御率、クリーンシート数という4つの指標を使用して振り返りました。
やはり2022シーズンは京都の上福元選手の活躍が目立ちましたね。16位のチームにあって、2位の防御率に加え、セーブ率、セーブ数共にトップ3入り。スタッツから見る限り2022シーズン最もチームに貢献したゴールキーパーといえるのではないでしょうか。