コラム

being a good communicator - 2001.11.2

  ※本コラムは昔運営していた川口能活ファンサイト(深海)で掲載していたコラムを再掲したものです。一部内容が古い可能性がありますがご了承ください。  

川口のポーツマス入団会見。 川口は、通訳を使わずに、たどたどしいながらも、 自分の英語で会見を行った。日本でもその様子はよく放送されたので、 見た人も多いと思うが、川口の英語は決してそこまで流暢というわけではない。 それとは対照的に、プレミアリーグのアーセナルに行った稲本は入団会見で、 何か英語でコメントを、と促され、「my name is Inamoto」というのが精一杯で、 会場内はどこかシラけた雰囲気になったという。ここでは、決して稲本を批判しているわけではない。 日本人の多くの人が稲本と同じような状況に立たされたら、 稲本と同じように、何も言えなかったり、 ごくごく簡単な英語しかしゃべることができないのではないだろうか??

自分の話に自信のある人は、常に話題の中心にいる。 逆に話が下手だと自分で思っている人は、 2、3人で話している中ではよくしゃべるのに、 集団の中に入ると途端に話せなくなってしまう。 それはたくさんの人の注目を集めた中でしゃべって自分の話が面白くなかったら恥ずかしい、 と感じてしまうからだろう。英語の場合も同じで、 自分の英語力に自信のない人は、 英語のしゃべれない人同志でふざけながら英語で話すことはできても、 周りが英語をしゃべれる人の中でも堂々と英語を話すことはできない。 ただ、小さくなって、できるだけ話を振られないようにするしかない。 そして、思うのだ。「英語で話すのは、もうちょっと英語がうまくなってからでいいや」 しかし、実感している人も多いと思うが、いくら文法を完璧に勉強しても、 英語をしゃべれるようにはならない。 むしろ、ネイティブスピーカーでも文法はかなりいい加減であることが多い。 我々日本人だって、日本語の文法を完璧にマスターしているか、 といったらそうでもない。やはり英語がうまくなるには、 とにかく英語をしゃべるしかないのだ。とは言っても、 どうしても相手に比べて幼稚な英語をしゃべるのは恥ずかしいという気持ちが働いてしまうものだ。 でも、実際には相手の方は英語のうまさなどそこまで気にしていない。 自信がなくて、しゃべらないよりは、どんなにへたくそでもいいし、 ジェスチャーを交えてもいいから、とにかく英語に挑戦してみる方が、 相手の好感度もいいし、しかも英語上達への近道である。

冒頭の話に戻ると、どんなにたどたどしくても会見を自分で英語で話すことに挑戦した川口と、 恥ずかしがって、あまりしゃべらなかった稲本では、 まず周りの受けた印象が全然違う。 海外では、自分をアピールしない限り全く相手にもされないというからなおさらだ。 最近苦戦しているらしいパルマの中田も、渡伊した早い段階からイタリア語をマスターし、 誰もが認める成功を遂げた。 圧倒的な実力さえあれば、海外でもやっていける、 という考えは間違っていることは、 何人かの日本人選手が海外に行ったことにより証明された。 やはり、海外で活躍するには、サッカーの技術の前にコミュニケーション能力が問われるのだと思う。 川口はFマリノスにいた頃から、若手選手とのコミュニケーションを積極的にとっていたという。 川口はチームにおけるコミュニケーションの大切さを誰よりも解っている。 だからこそ、入団会見もあえて自分の英語で挑戦しよう、と志したのだと思う。 また、練習中もFマリノスの頃からそうしていたのと同じように大きな声で指示を出しているという。 いいたい事を今までは日本語で簡単に言えたのに 、英語だと正確に伝えられないことが多く、 どれだけ歯がゆい思いをしているかは測り知れないが、 コミュニケーションはチームの信頼を得るために間違いなく必要である。

GKは他のどのポジションよりもその社交性が問われる。 川口がイングランドに2部で活躍できる技術があるのは、 ほぼ間違いないと思われるので、あとは、チームメイトの心をつかみ、 川口の人間性を理解してもらい、本当の意味でチームの一員として認めてもらって、 誰もが納得した形で試合にデビューするだけだ。そして、その日は近い。

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