コラム

cancan - 2003.6.21

  ※本コラムは昔運営していた川口能活ファンサイト(深海)で掲載していたコラムを再掲したものです。一部内容が古い可能性がありますがご了承ください。  

「GKに止められないシュートはない」というのは日本代表GKのあのノッポの方の言葉です。 これは私としても大変共感できる言葉であります。

GKの最高の瞬間は、 やはり相手FWが渾身の力をこめて打ったシュートを体を投げ出して がっつり止めたときでしょう。しかし、GKの脳裏に焼き付いているのは、 そんな栄光の瞬間ではないのです。触りたくても触れない、 自分の目の前をすりぬけていくボールの残像やネットの中で淋しげに転がっているボール。 喜ぶ相手選手と、肩を落とす味方選手。 こんなシーンばかりが映像として保存されているものなのです。 試合が終わったら、頭の中でその失点シーンが頭の中でリプレイされます。 試合に勝っても負けてもそんなことは関係ない。 何回も繰り返されるそのムービーを見て自分を責めて、 落ち込んで。そして考えるのです。「どうやったらあのシュートを止めることができていたんだろう。」

たいていの場合、自分なりに解決策は見つかります。 もっとポジションを前にとっていたら・・・体の向きを考えていたら・・・ その前で飛び出していたら・・・。止めるシーンを頭で繰り返しイメージして、 それを練習で体に刷り込み試合で実践することによって、 GKはまた一つプレーの幅を広げることができるのです。 止められるシュートが増えるのです。

「GKに止められないシュートはない」 実際アルゼンチン戦のサビオラのシュートが取れるGKはいないと思います。 でも必ず防ぐ方法はあったのです。シュートがすごいのだったらシュートを打たせなければいい 。必ず未然に防ぐ方法はあったはずでした。どんなに長くサッカーをやっていても、 まったく同じシーンなんていうのはやってこない。 だから確かめる方法なんてないけど、だからこそ、 「止められないシュートはない」って思うことができる、 そういうことなんだと思います。

さて、話は変わりますがコンフェデレーションズカップのNZ戦。 日本は3-0で完封。 代表のでっかい方のGKは二つのスーパーセーブをしたというので、 早速ハイライトで確認してみました。 は?まさかこれ? 1つは頭にあてただけのふわっとしたボールを必死に戻りながらボールを抱え込んだプレー。 もう1つは風船のようなヘディングシュートを必死に右手ではじき出すプレー。 これが「二つのビッグセーブで完封」したプレー? おまいさん、ちょっとそれはおかしいんでないかい? そうみんなだまされているのです。 あるいは俊輔のかけた魔法にかかってしまっているのかも知れません。 3つのゴールに酔いしれてしまって、 冷静にプレーを見ることができなくなっているのかも知れません。 あのプレーはすごくない。いや、全然すごくない。 むしろあの2発のヘディングのどっちか1つでもゴールに入ったところを想像してみてください。 おそらく「あれれ?」と思うはずです。あんなのが入っちゃうの?と。

そう、ふつーのレベルのGKがゴール前に立っていれば、 あんなシュートは絶対入らないのです。 だってあんなシュートが入ってるの見たことないじゃん。 簡単にいうと、あのプレーは誰でもできるお手軽セーブということです。 難しいプレーを簡単に見せるのは難しい。 でも簡単なプレーを難しく見せるのは簡単なことなのです。 私はそういうプレーをよしとしない日本代表のちっちゃい方のGKが好きです。

「GKに止められないシュートはない」たしかにそう思います。 でも「安定感」という名のもとに、 プレーの幅が広がっていく気配を見せない君にはあるんじゃない?

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