コラム

SUB KEEPER - 2002.12.7

日本No1GK川口能活が、イングランド1部リーグで首位を走るポーツマスFCではスタメンを外されている。キーパーにとって、サブとスタメンの距離は遠く、その道は暗い。キーパーの途中交代というのは、怪我などのアクシデントがない限りありえない。それどころか、大会、あるいはリーグを通じて、よっぽどのことがない限り、キーパーは替えないのが常識だ。途中出場というオプションのあるフィールドプレイヤーに比べると、サブキーパーと、スタメンとでは、天国と地獄ほどの差がある。それでも、いつ訪れるかもわからない、あるいは何年か先になるかもわからない天国へ上る突然のチャンスが訪れたときに備え、体も作っておかなければならないし、モチベーションも維持しておかなければならない。言わば生殺しの状態である。 ゴールキーパーのプレーはチームメイトやスタッフとの信頼関係によって大きく支えられている。もしGKをちょくちょく替えられるようなことがあれば、その信頼関係は崩れ、DFとのコンビネーションの面も含めて、チームはいつまでたっても不安定なままになってしまう。それがキーパーを替えることのできない大きな理由の一つだ。

サブキーパーのスタメンへの道は遠い。たとえ、試合に出ることができても、さらにそのまま試合に出つづけることは難しい。その時点ではすでに正GKと、チームの信頼関係が築き上げられており、それを完全に打ち破るには、圧倒的な実力差を見せつける以外にない。つまり正GKと同じレベルのプレーを披露しただけでは意味がないのだ。

アクシデントがない限り、試合に出るチャンスは訪れない。自分の出場を願うこと、それはつまり正GKのアクシデントを願う、ということに等しい。昨年、デーブ・ビーサントにスタメンを奪われた川口は、心のどこかで、デーブの怪我を祈っていたという。「そうしたら、自分が怪我をして、そのままワールドカップも出られなかった。」と本人も言っている。でも今年の川口は違う。「今はバックアップ選手として、プレミア昇格に貢献したいです」この言葉からも分かるように、川口に焦りはない。それでももちろん、スタメンへの道を進むのをあきらめたわけではなくて、いずれくるはずであるスタメンを掴むチャンスに備えて、自分に足りないものが何かを見つけてそれを埋めるためにトレーニングをする毎日を送っている。チャンスが訪れたときに、100%の実力を出して、現正GKシャカ・ヒスロップとの圧倒的な実力差を見せつけるため。そして、日本のあらゆるGKよりも勝っているということを、日本の全国民に見せつけるために。その日は近いはず。

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