コラム

試合勘 - 2004.7.17

  ※本コラムは昔運営していた川口能活ファンサイト(深海)で掲載していたコラムを再掲したものです。一部内容が古い可能性がありますがご了承ください。  

サブチームとトップチームとでは、GKの役割が大きく違ってくる。サブチームでの試合ではGKが主役になれることが多い。トップチームがメンバーをある程度固定して、それなりに時間をかけて戦術を練ることができるのに対し、サブチームはメンバーの入れ替えも多いため、戦術の理解度に差があったり、戦術の変更をする必要があったりする。急造な戦術では、試合の最中に歯車が狂うことが多い。フリーでシュートを打たれる。GKの1対1。そういったシーンが増える。ピンチが多い分GKの活躍のチャンスが増えるのだ。しかし、トップチームでは、攻守ともに洗練されたシステムが構築されているため、実力が均衡している相手であれば、大きなピンチ、つまりGKの派手な活躍のチャンスは1試合に1つあるかないか、である。トップチームの試合でGKに求められる役割は、DFを動かすことだとか、DFの裏のスペースをケアするだとか、バックパス、ハイボールの処理だとか、むしろそういった地味な仕事がほとんどなのだ。もちろん、それ以前の問題としてシュートを止めるなどの能力を十分に持っていることは前提であるが。

川口能活は、ポーツマスで実力以外の理由で正GKの座を剥奪されて以来、活躍の場はリザーブリーグに限定されていた。しかしリザーブリーグでどんなに結果を残しても、一向に川口をトップチームで使おうとはしなかった。リザーブリーグでの経験により、1対1の強さ、至近距離からの反応といった能力には一層磨きがかかったに違いないが、イングランドの激しいサッカー、満員のスタジアムでのサポーターからのプレッシャー、そしてトップレベルでのサッカーにおいての守り方、そういった経験をポーツマスで積むことは許されなかったのだ。

これをもって「試合勘」とするならば、確かに川口は試合勘に不安があると言われてもおかしくなかったのかも知れない。しかし、ウルグアイ戦でのキャッチミスは試合勘とは違ったところにある。あんな初歩的なミスは、練習不足(彼に限ってありえない)でなかったら、精神的な原因以外ではありえない。本人もそう語っているように。まぁその具体的な理由については吉井さんの「闘争本能」などを参考にしてもらうとして、とにかくこの時期、「イングランドの1部リーグで試合に出ていない」というだけの中途半端な前提知識だけで、「やっぱり川口は試合勘が・・・」という無責任な批評が許せなかったのだ。あのミスに込められていた意味はそんな簡単に一言で表現できるようなものではない。

ま、もっともFCノアシェランで、公平な競争をすることを許され、試合にも出場することができる現在の環境では、そのような心配はもはや無意味なものであるのだが。

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